- TOP>
- GHS・SDS・法規制ニュース
GHS・SDS・法規制ニュース
GHS分類、SDS作成、化学品管理に関連した各国の法規制情報をご提供いたします。
国連
国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、2023年に実施したPFOA、PFOSの発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。
- Perfluorooctanoic acid (PFOA)
- 用途:PFOAは1940年代に初めて生産され、フッ素ポリマーの製造等に広く使用されてきた。家庭用品、カーペット、繊維、革製品、食品・飼料等の包装に対して、汚れ、油、水をはじく表面コーティングを施すために使用されるほか、化粧品、電気・電子機器、建築資材にも利用されている。
- ヒトの疫学調査:PFOAと関連して腎臓と精巣に発がん性が認められた。腎臓では、PFOAばく露に関連する腎臓がんのリスクが増加した。また、別の疫学調査でも、PFOAばく露による腎細胞がん (腎臓がんの80~90% を占める) の増加が見られた。精巣がんについても、平均血清PFOA濃度と精巣がんリスクに関連性が示された。
- 動物実験:PFOAを飼料に混入して雌雄のSprague-Dawleyラットに投与した結果、雄では、肝細胞腺腫の発生率が有意に増加した。肝細胞がんにも増加傾向が見られた。膵臓では、腺房細胞腺腫の発生率が有意に増加した。雌では、子宮腺がんの発生率が有意に増加した。膵臓の腺房細胞腺腫・腺がんの発生率に増加傾向が見られた。別の研究では、雄のSprague-Dawleyラットにおいて、精巣のライディッヒ細胞腺腫の発生率が増加した。また、経口投与された雌の CD-1マウスの試験では、肝臓の血管肉腫に増加傾向が見られた。
- Perfluorooctanesulfonic acid (PFOS)
- 用途:PFOAと同様に、ワックス、カーペット、食品・飼料等の包装に使用される他、イメージング装置や半導体の製造、フォトリソグラフィーや電気めっき、断熱材、染料、インクなどの用途にも使用される。また、消火剤として水成膜泡の組成(Aqueous Film Forming Foam、AFFF)にも使用されている。
- ヒトの疫学調査:PFOS については、PFOAよりも利用可能な研究が少なく、精巣、甲状腺、乳腺について発がん性が疑われたが、十分な情報や一貫性がないため、因果関係の有無について結論を下すことはできないとしている。
- 動物実験:PFOSを飼料に混入して雌雄のSprague-Dawleyラットに投与した。雄では、肝細胞腺腫の発生が増加した。雌では、肝細胞腺腫、肝細胞がんの発生率が有意に増加した。
- Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctanesulfonic Acid (PFOS)、IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans Volume 135 https://publications.iarc.who.int/636
これらの結果に基づいて、IARCはPFOAをグループ1(carcinogenic to humans)に分類している。
これらの結果に基づいて、IARCはPFOSをグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
参考資料
欧州
欧州化学品庁(ECHA)は、3物質についてREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加する予定である。
- 1,1,1,3,5,5,5-heptamethyl-3-[(trimethylsilyl)oxy]trisiloxane (CAS RN 17928-28-8)(M3T)
- 用途:化粧品・パーソナルケア製品、香水、芳香剤、加工助剤、製造中間体、液体洗剤、自動車ケア製品、塗料・コーティング剤、接着剤等
- 有害性:vPvB物質(極めて残留性や生体蓄積性が高い物質)に該当する。M3Tは、ヘキサメチルジシロキサン(L2)、オクタメチルトリシロキサン(L3)、デカメチルテトラシロキサン(L4)と構造的に類似しており、M3TはL4と同じ分子式、類似の官能基を有している。L2、L3のデータを使用して、M3T の残留性を予測した。堆積物中のM3Tと構造類似体L3およびL2の生分解に関するシミュレーション研究(OECD TG 308)では、M3TはL3およびL2よりも残留性が高く、堆積物の半減期は185日と推定された。半減期が180日を超えることから極めて残留性が高い物質(vP物質)に該当する。生物濃縮性についてL4のデータを使用して予測した。L4のBCF(生物濃縮係数)は7525.7 L/kgであることから、M3TについてもBCFは5000 L/kgを上回ると推定され、極めて生体蓄積性が高い物質(vB物質)に該当する。
- Decamethyltetrasiloxane (CAS RN 141-62-8)(L4)
- 用途:化粧品・パーソナルケア製品、潤滑剤、離型剤、熱伝導流体、洗剤、自動車ケア製品等
- 有害性:vPvB物質(極めて残留性や生体蓄積性が高い物質)に該当する。L4 は、ヘキサメチルジシロキサン(L2)、オクタメチルトリシロキサン(L3)と構造的に類似している。L2、L3のデータから、堆積物中のL4の半減期は180日を超えると推定され、極めて残留性が高い物質(vP物質)に該当する。L4のBCF(生物濃縮係数)は7525.7 L/kgであり、BCFは5000 L/kgを上回ることから、極めて生体蓄積性が高い物質(vB物質)に該当する。
- Tetra(sodium/potassium) 7-[(E)-{2-acetamido-4-[(E)-(4-{[4-chloro-6-({2-[(4-fluoro-6-{[4-(vinylsulfonyl)phenyl]amino}-1,3,5-triazine-2-yl)amino]propyl}amino)-1,3,5-triazine-2-yl]amino}-5-sulfonato-1-naphthyl)diazenyl]-5-methoxyphenyl}diazenyl]-1,3,6-naphthalenetrisulfonate(別名Reactive Brown 51)(CAS RN -)
- 用途:繊維染料
- 有害性:Reactive Brown 51はCLH(Harmonised classification and labelling)において、生殖毒性区分1B、皮膚感作性区分1Aに分類され、生殖毒性が懸念される。
参考資料
- Substances of very high concern identification https://www.echa.europa.eu/substances-of-very-high-concern-identification
欧州化学品庁(ECHA)は環状シロキサン D4、D5、D6に関するトピックスページを開設し、これらの特性、用途、懸念事項、規制状況に関する情報を提供している。
環状シロキサン D4、D5、D6 は、シリコン (Si) と酸素 (O)が繰り返し結合した環状構造のシリコーン系化合物である。揮発性があり、使用中に空気中へ放出されるため、「環状揮発性メチルシロキサン」とも呼ばれる。
D4:Octamethylcyclotetrasiloxane (CAS RN 556-67-2)
D5:Decamethylcyclopentasiloxane (CAS RN 541-02-6)
D6:Dodecamethylcyclohexasiloxane (CAS RN 540-97-6)
- 用途:主に、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などのシリコンポリマーの製造中間体として使用され、化粧品、ワックス、洗浄・清掃製品、ドライクリーニングなど、消費者向け製品にも使用されている。
- 懸念事項:D4、D5、D6 は、植物や動物に蓄積し、下水汚泥、土壌、水などからも検出され、「極めて残留性が高い、極めて生体蓄積性が高い物質」(vPvB)に分類されている。また、D4は水生生物に対して強い毒性を持ち、その影響が長期間持続することから、生殖機能への悪影響も懸念されている。また、D4、D5、D6には長距離環境移動の可能性も懸念される。
- 規制状況:
・REACH規則:2018年1月、wash-off化粧品(シャンプー、シャワージェル、シェービング製品、液体石鹸など)における D4、D5の使用が制限され、2020年2 月から適用されている。2018年6月、D4、D5、D6 はvPvB物質であることから、SVHCの候補リストに追加された。さらに、2024年5月には、D4、D5、D6 を含むleave-on化粧品(メイクアップ製品、フェイスクリーム、ヘアスタイリング製品など洗い流さない化粧品)に関する新たな制限が採択され、パーソナルケア製品やドライクリーニング、ワックス・ポリッシュ、洗浄製品などの消費者製品にも適用される。2026年6月以降に適用が開始される。
・化粧品規則:D4は生殖毒性の懸念から、化粧品規制の附属書IIに追加され、2019年以降、D4の化粧品への使用は禁止されている。
参考資料
- Cyclosiloxanes https://echa.europa.eu/hot-topics/cyclosiloxanes
お問い合わせ
大阪オフィス(本社)
〒541-0043
大阪市中央区高麗橋4丁目6番17号
住化不動産横堀ビル7F
Tel: (06) 6220-3364 / Fax: (06) 6220-3361
担当者:樋口 敏浩
本件に関するお問い合わせ