GHS・SDS・法規制ニュース(2021年)

GHS分類、SDS作成、化学品管理に関連した各国の法規制情報をご提供いたします。

国連

2022年1月に開催予定の第17回ストックホルム条約残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC.17)において、カナダは長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)およびその塩や類縁物質を規制対象物質として提案している。

対象物質
  • 炭素鎖数が9~21のPFCAおよびその塩
  • 類縁物質として、分解して長鎖PFCAに変換される可能性がある前駆物質
長鎖PFCAは自然界には存在せず、いずれも人工的に合成された化合物である。
環境に放出された長鎖PFCAは長期間残留し、C9 ~C14 PFCAはヒトのバイオモニタリングにおいて世界中で検出されている。C15~C21 PFCAはスウェーデンの雪や土壌、南極の沿岸でも検出されている。また、C16 PFCAやC18 FCAはホッキョクグマやハヤブサなどの野生生物からも検出されている。
長鎖PFCAやその塩の使用量は多くはないが、C9 PFCAのアンモニウム塩(アンモニウムペルフルオロノナノエート、APFN)は、界面活性剤やフルオロポリマーとして、主にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の製造に用いられ、これらPVDF等のフッ素樹脂は、ケーブル、ワイヤー、電子機器、建材、パルプおよび製紙など、広く用いられている。
また、PFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物)の製造時に生成され、関連する製品に不純物として含まれる可能性がある。

参考資料

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、2020年に実施したアクロレインの発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。

アクロレイン
  • 用途:
    アクロレインは、反応中間体として、アクリル酸やメチオニンを含む多くの化学製品の製造に使用され、除草剤としても使用されている。また、アクロレインは、燃料、木材、プラスチックの燃焼中に生成され、タバコの煙や電子タバコの蒸気にも含まれている。高温での焙煎や揚げ物でもアクロレインが生成され、さらに発酵中にも形成されることから、さまざまなアルコール飲料にも含まれている。

    ばく露モニタリングでは、尿中代謝物であるN-アセチル-S-(3-ヒドロキシプロピル)-L-システイン(3-ヒドロキシプロピルメルカプツル酸、HPMA)がばく露モニタリングに用られる。

  • ヒト発がん性:
    アクロレインによるDNA付加体形成、肺発がん等が報告されているが、IARCはアクロレインばく露とヒト発がん性の関連は明確でないと結論している。
  • 動物における発がん性:
    動物実験では、吸入ばく露によりマウスで悪性リンパ腫、ラットでは鼻腔の横紋筋腫、扁平上皮癌の発生が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、2020年に実施した芳香族アミンと関連化合物の発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。

オルト-アニシジンおよびオルト-アニシジン塩酸塩
  • 用途:
    オルト-アニシジンおよびオルト-アニシジン塩酸塩は、主に消費者製品、繊維、紙、段ボール用のアゾ顔料および染料の合成に化学的中間体として使用されている。
  • ヒト発がん性:
    膀胱がんの発生が報告されている。
  • 動物実験:
    マウスで肝芽細胞腫、肝細胞腺腫、肝細胞がん、ラットで白血病、膀胱や腎臓の移行上皮がんが発生した。
これらの結果から、IARCはグループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。
アニリンおよびアニリン塩酸塩
  • 用途:
    アニリンは、イソシアネート、染料、顔料、ゴム処理化学物質の合成、医薬品、除草剤、殺菌剤、繊維、皮革、着色剤などの多くの消費財の製造に使用される。
  • ヒト発がん性:
    膀胱がんの発生が報告されている。
  • 動物実験:
    ラットで脾臓の線維肉腫、血管肉腫、副腎の悪性褐色細胞腫、中皮腫が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。
カップフェロン
  • 用途:
    銅、鉄、スズ、バナジウム、トリウムなどの金属を他の金属から分離するために使用される。
  • 動物実験:
    マウスで血管肉腫、肝細胞がん、ジンバル腺の扁平上皮がん、皮脂腺腺がん、ラットでは、血管肉腫、肝細胞がん、前胃の扁平上皮がん、中皮腫が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

  • Some Aromatic Amines and Related Compounds、IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans Volume 127 https://publications.iarc.fr/599

OECD

OECDの化学品委員会は、Pig-aアッセイ(Mammalian Erythrocyte Pig-a Gene Mutation Assay)を新規のin vivo遺伝毒性試験として提案している。

遺伝毒性試験
遺伝毒性とは、化学物質がDNAや染色体等に作用して、DNAや染色体の構造や量を変化させるものである。遺伝的指標により、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、DNA損傷試験に、また、細菌や哺乳類培養細胞などを用いるin vitro 試験(エームス試験、in vitro染色体異常試験等)と、マウス、ラットなどを用いる in vivo 試験(小核試験、トランスジェニック動物遺伝子突然変異試験、コメット試験等)により評価される。
Pig-aアッセイ
Pig-aアッセイは、Pig-a遺伝子の突然変異を検出するもので、Pig-a遺伝子に突然変異が生じると、赤血球の膜たんぱく質であるGPIアンカー型膜たんぱく質の生成が阻害される。

被験物質を投与した動物から末梢血を採取して赤血球を分離し、GPIアンカー型膜たんぱく質に対する蛍光色素標識抗体で標識してフローサイトメーターで解析することにより、Pig-a遺伝子変異型赤血球と野生型赤血球を識別することができ、Pig-a遺伝子の突然変異を検出することができる。

本ガイドライン案では、哺乳動物を用いた28日間反復投与毒性試験が推奨されている。

注)

  • Pig-a遺伝子(ホスファチジルイノシトールグリカンクラスA遺伝子)は、X染色体上にある遺伝子でGPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)の合成に関与している。Pig-a遺伝子が変異すると、GPIの合成阻害によりGPIアンカー型膜たんぱく質が阻害される。

    赤血球を用いたアッセイであることから、従来の トランスジェニック動物を用いたBigBlueやgpt delta等の遺伝子突然変異試験と比較して、解析を短時間で効率的に行うことができる。

参考資料

米国

ニューヨーク州議会は、法律S04630に布張り家具、マットレス、電子機器の筐体における難燃剤に関する規制追加を承認した。

対象製品は、以下の消費者製品である。
  • 布張り家具およびマットレス
  • 電子ディスプレイの筐体
規制内容
  • 2022年12月31日~:製造者は、電子ディスプレイ筐体のすべての難燃剤を特定し、報告書を提出する必要がある。
  • 2023年01月01日~:布張り業者は、意図的に添加された難燃剤を含む布地を使用して、布張り家具を修理してはならない。
  • 2024年01月01日~:意図的に添加された難燃剤を含む布張りの家具やマットレスの販売が禁止される。
  • 2024年01月01日~:電子ディスプレイの筐体・スタンドについて、意図的に添加された有機ハロゲン化難燃剤を含む製品の販売が禁止される。

参考資料

カリフォルニア州の環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、ペルフルオロノナン酸(PFNA)とその塩について、Proposition65の生殖毒性を誘発する化学物質リストに追加することを提案している。

雄の生殖機能への影響
  • ヒトの疫学調査において、血清テストステロンレベルの低下、精子数の減少、精子濃度の低下等が報告されている。
  • 動物実験においても、マウスやラットで精巣上体重量の低下、精巣重量の低下、精子形成の低下を示唆する精母細胞、精原細胞、セルトリー細胞の変性、間質細胞の萎縮等の変化が認められた。

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は統合リスク情報システム(IRIS)において、ペルフルオロブタン酸(PFBA)類の有害性を評価しレビュー(案)を公表した。

対象物質
ペルフルオロブタン酸(PFBA、CAS RN 375-22-4)およびその塩で、ペルフルオロブタン酸アンモニウム(CAS RN 10495-86-0)、ペルフルオロブタン酸ナトリウム(CAS RN 2218-54-4)、プタフルオロブタン酸カリウム (CAS RN 2966-54-3)等の非金属・アルカリ塩が含まれている。
一方、PFBAに依存しない毒性の可能性があるため、金属塩(ヘプタフルオロ酪酸銀、CAS RN 3794-64-7)は含まれていない。
用途・環境挙動等
PFBA類は、布の汚れ防止、紙の食品包装、カーペットに使用されている他、写真フィルムの製造にも使用され、消費者製品についても長鎖ペルフルオロアルキルカルボン酸(PFCA)の代替品として使用されている。PFBA類は農作物に蓄積することがわかっており、家庭のほこり、土壌、食品、地表、地面、飲料水からも検出される。
そのため、ヒトは、屋内または屋外の空気中、飲料水および食品の摂取、さらにPFBA類を含有する製品との皮膚接触によってばく露される可能性がある。
また、PFAS類に関する懸念は、これらの化合物が加水分解、光分解、生分解に対する耐性に有することから、長期間環境中に残留することである。
ヒト健康影響
ヒトの疫学研究として、PFBAばく露と、甲状腺ホルモン、肝酵素、出産(出生時体重、妊娠期間など)、精子、血中脂質、血圧などの健康パラメーターとの関連について調査されているが、明確な結論は得られていない。
ラット・マウス等の動物実験では、PFBAによる肝臓、甲状腺、発達への影響が認められている。
  • 肝臓への影響:相対肝臓重量の増加、肝細胞肥大
  • 甲状腺への影響:遊離および総チロキシン(T4)の減少、甲状腺濾胞肥大・過形成
  • 発育への影響:胎児の減少(同腹児の総吸収)、および発育遅延(眼の開口、膣の開放、包皮の分離の遅延)
ヒトの発達、甲状腺、および肝臓への影響について、子宮内ばく露や成人期のPFBAばく露露によって引き起こされる可能性が懸念される。

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は統合リスク情報システム(IRIS)において、ペルフルオロブタン酸(PFBA)類の有害性を評価しレビュー(案)を公表した。

対象物質
ペルフルオロブタン酸(PFBA、CAS RN 375-22-4)およびその塩で、ペルフルオロブタン酸アンモニウム(CAS RN 10495-86-0)、ペルフルオロブタン酸ナトリウム(CAS RN 2218-54-4)、プタフルオロブタン酸カリウム (CAS RN 2966-54-3)等の非金属・アルカリ塩が含まれている。
一方、PFBAに依存しない毒性の可能性があるため、金属塩(ヘプタフルオロ酪酸銀、CAS RN 3794-64-7)は含まれていない。
用途・環境挙動等
PFBA類は、布の汚れ防止、紙の食品包装、カーペットに使用されている他、写真フィルムの製造にも使用され、消費者製品についても長鎖ペルフルオロアルキルカルボン酸(PFCA)の代替品として使用されている。PFBA類は農作物に蓄積することがわかっており、家庭のほこり、土壌、食品、地表、地面、飲料水からも検出される。
そのため、ヒトは、屋内または屋外の空気中、飲料水および食品の摂取、さらにPFBA類を含有する製品との皮膚接触によってばく露される可能性がある。
また、PFAS類に関する懸念は、これらの化合物が加水分解、光分解、生分解に対する耐性に有することから、長期間環境中に残留することである。
ヒト健康影響
ヒトの疫学研究として、PFBAばく露と、甲状腺ホルモン、肝酵素、出産(出生時体重、妊娠期間など)、精子、血中脂質、血圧などの健康パラメーターとの関連について調査されているが、明確な結論は得られていない。
ラット・マウス等の動物実験では、PFBAによる肝臓、甲状腺、発達への影響が認められている。
  • 肝臓への影響:相対肝臓重量の増加、肝細胞肥大
  • 甲状腺への影響:遊離および総チロキシン(T4)の減少、甲状腺濾胞肥大・過形成
  • 発育への影響:胎児の減少(同腹児の総吸収)、および発育遅延(眼の開口、膣の開放、包皮の分離の遅延)
ヒトの発達、甲状腺、および肝臓への影響について、子宮内ばく露や成人期のPFBAばく露露によって引き起こされる可能性が懸念される。

参考資料

カリフォルニア州の環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、ペルフルオロノナン酸(PFNA)とその塩、およびペルフルオロデカン酸(PFDA)とその塩の発生・生殖毒性に関する報告書を公表した。12月14日に発生・生殖毒性物質特定委員会(DARTIC)で議論される。

PFNA、PFDAともに雄の生殖機能、甲状腺ホルモンへの影響が懸念されている。

雄の生殖機能への影響
  • ヒトの疫学調査において、血清テストステロンレベルの低下、精子数の減少、精子濃度の低下等が報告されている。
  • 動物実験においても、マウスやラットで精巣上体重量の低下、精巣重量の低下、精子形成の低下を示唆する精母細胞、精原細胞、セルトリー細胞の変性、間質細胞の萎縮等の変化が認められた。
甲状腺への影響
  • 動物実験において、ラットの甲状腺ホルモンと結合することや、甲状腺ホルモンレベルの低下や機能を阻害することが報告されている。

参考資料

カリフォルニア州の環境保護有害物質管理局(OEHHA)は、1-ブロモプロパン(1-BP)の吸入ばく露による発がん性に関する評価(案)を公表した。

今後、有毒空気汚染物質に関する科学的レビューパネル(SRP)によって議論される。(2021年10月15日)

1-ブロモプロパン(1-BP)
1-BPは、オゾン層破壊物質であるクロロフルオロカーボンの代替品として、スプレーの溶剤、ラミネートの接着剤、金属、プラスチック、光学機器、電子機器の脱脂・洗浄剤として用いられており、さらに、ドライクリーニングの溶剤としても限定的ではあるが使用されている。
また、医薬品、農薬、第4級アンモニウム化合物、フレーバーやフレグランスの製造中間体として用いられている。
発がん性評価
げっ歯類の長期発がん性試験において、1-BPばく露により、ラットでは大腸腺腫(雌雄)、皮膚の扁平上皮乳頭腫、扁平上皮がん等の腫瘍(雄)、マウスでは肺の腺腫・腺がん(雌)が発生した。
また、1-BPはin vitroやin vivo試験においてDNA付加体の形成や変異原性が認められている。
OEHHAは1-BPの発がん性について、発がん用量に閾値がないと判断し、発がん性試験における用量・反応関係から算出したユニットリスクを用いて、1-BPばく露により発生するがんの過剰発生率を算出している。
  • 吸入ばく露によるユニットリスク: 3.7 × 10-6(μg/m3)-1
これは、1-BPの1μg/m3に一生涯ばく露された場合、がんの発生率が3.7 × 10-6増加することを示している。

参考資料

メイン州はペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含有する製品の使用を禁止する法案を可決した。

製品の届出
意図的にPFASを添加した製品について、製造業者は、2023年1月1日からPFAS含有製品ごとにPFASの使用をメイン州に通知する必要がある。製品の概要、PFASを添加する目的、含有するPFASとその含有量等が要求される。
販売の禁止
2023年1月1日から、意図的にPFASを添加・処理したカーペット、ラグ、ファブリックの販売が禁止される。また、2030年1月1日からは、PFASを意図的に追加した製品の販売が禁止される。
なお、禁止については中古品の販売や転売には適用されない。

参考資料

米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition65の発がん物質リストに4物質を追加する予定である。

対象物質
  • テトラヒドロフラン (CAS RN 109-99-9)
  • 2-エチルヘキシルアクリラート (CAS RN 103-11-7)
  • メチルアクリラート (CAS RN 96-33-3)
  • トリメチロールプロパントリアクリラート (テクニカルグレード)
  • これらの物質について、国際がん研究機関(IARC)は動物試験において発がん性が認められことからグループ2B(possibly carcinogenic to humans)であると結論している。
    なお、禁止については中古品の販売や転売には適用されない。

参考資料

米国、オレゴン州は、学校において発泡スチロール製の食器の使用を禁止する法案を公表した。

規制対象
スチレンモノマーを原材料として、発泡スチロール等に成形した発泡ポリスチレンを用いた、飲料カップ、ボウル、コンテナ、蓋、プレート、トレイ等が対象となる。
除外規定
以下のような除外が規定されている。
  • ポリスチレン製品のリサイクル方法が開発された場合
  • 購入済みのポリスチレン製品の在庫(在庫がなくなるまで使用可)
  • ポリスチレン製品の使用契約があり、ポリスチレン製品を非ポリスチレン製品に置き換えることができない場合(契約期間の終了まで使用可)

米国環境保護庁(EPA)は、ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS、CAS RN 375-73-5)および関連化合物ペルフルオロブタンスルホン酸塩(CAS RN 29420-49-3)のヒト健康影響に関する評価結果を公表した。

背景
PFBSはPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の代替物質として幅広く用いられており、PFBSは、表面水、排水、飲料水、ほこり、カーペットやカーペットクリーナー、床ワックスなどの環境中や消費者製品において検出されている。
主な毒性兆候
PFBSは、ラットやマウスにおいて、甲状腺、発達影響、腎臓への影響が認められた。甲状腺の影響は、主に、甲状腺ホルモンの低下であり、成熟の遅延または生殖発達の影響を伴っていた。腎臓では、尿細管の過形成が観察された。
健康影響に基づく指標値
米国EPAは、各種毒性試験の結果に基づいて、亜慢性RfDを0.001 mg/kg/日、慢性RfDを0.0003 mg/kg/日としている。
一方、PFOAの慢性Rfdは0.00002 mg/kg/日、PFOSの慢性Rfdは 0.00002 mg/kg/日であり、PFOAやPFOSと比較すると、PFBSの毒性が低いことを示している。

注)

  • 亜慢性Rfdは、ヒトが食品や飲料水を介して化学物質を摂取した場合、1か月~数年間の摂取において健康に影響を示さないと推定される摂取量
  • また慢性Rfdは、ヒトが数年~生涯にわたって毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される摂取量

参考資料

米国・労働安全局(OSHA)は、国連GHS改訂7版に準拠した危険有害性周知基準(HCS、Hazard Communication Standard)の改定案を公表した。コメントの提出期限は2021年4月19日である。

主な変更としては、国連GHS改訂7版に準拠した可燃性ガス、エアロゾル、鈍性化爆発物の分類が改定されている。

参考資料

カナダ

カナダの環境・保健省は、6種の難燃剤について、ヒト健康あるいは環境影響が懸念されることから、カナダ環境保護法(CEPA)の有害物質リスト(スケジュール1)に収載する予定である。

カナダ当局は、10種のアリル有機リン酸、アルキル有機リン酸系の難燃剤についてスクリーニング評価を実施した結果、6種の難燃剤についてはヒト健康・環境影響が懸念されると評価した。

アリル有機リン酸エステル化合物
  • トリフェニルリン酸 (TPHP)、CAS RN 115-86-6
  • テルトブチルフェニルジフェニルリン酸 (BPDP)、CAS RN 56803-37-3
  • ビス(テルブチルフェニル)フェニルリン酸(BDMEPPP)、CAS RN 65652-41-7
  • イソデシルジフェニルリン酸(IDDP)、CAS RN 29761-21-5
  • イソプロピル化トリフェニルリン酸(IPPP)、CAS RN 68937-41-7
アルキル有機リン酸エステル化合物
  • トリエチルリン酸 (TEP)、CAS RN 78-40-0
これらの難燃剤は、主に、油、プラスチック、ゴム製品、繊維、発泡剤、塗料、接着剤、シーラント、建築材料を含む様々な用途に用いられている。また、これらの物質の一部は、食品包装(TPHP、IDDP、TEP)、害虫駆除製品(TPHP、IPPP)にも使用され、TPHPはネイルケア製品にも添加されている

有害性については、ヒト健康影響として肝臓や甲状腺等の特定の臓器に対する影響が認められ、特に子供に対するばく露が多いことから健康影響が懸念される。

また、これらの物質は水、土壌等の環境中に長期間残留する可能性は低いが、空気中の粒子と結合して大気輸送により遠隔地に運ばれている(北極圏などで検出されている)。また、生物濃縮に関する研究において生物蓄積の可能性が示唆される。

参考資料

カナダは、有害廃棄物の国境を越えた移動および有害なリサイクル材料に関する規制を公布した。


この規制はカナダ環境保護法の下で、有害廃棄物の国境を越えた移動や有害なリサイクル材料を規制するもので、「有害廃棄物および有害リサイクル可能材料の輸出入規制(SOR / 2005-149)」「有害廃棄物規制の州間移動(SOR / 2002-301)」「PCB廃棄物輸出規制1996(SOR / 97-109)」に置き換わるものである。

2021年10月31日に発効する。


有害廃棄物の国境を越えた移動および有害なリサイクル材料について、「輸入許可」「輸出許可」「カナダ国内での移動」等に関する規制や手続きが規定されている。

また、規制対象がリストされている。
  • スケジュール2および7:環境に有害な成分および許容濃度
  • スケジュール5:残留性有機汚染物質および許容濃度
  • スケジュール6および8:有害廃棄物および有害なリサイクル可能材料。

参考資料

欧州

欧州食品安全機関(EFSA)は、食品中のビスフェノールA(BPA)のリスクを再評価し、許容可能な一日摂取量(耐容一日摂取量、TDI)を大幅に減らすことを提案している。

BPAは、
ポリカーボネートなど、プラスチックや樹脂の製造に用いられている。食品接触材料としては、ポリカーボネートは再利用可能な飲料ボトル、食器(プレートやマグカップ)、貯蔵容器などの食品容器に使用されている。また、食品および飲料缶の保護コーティング用のエポキシ樹脂にも使用され、食品や飲料に少量ではあるが移行することが知られている。
EFSA は、
2006年に初回のリスク評価を実施し、その後、新しい科学情報に基づいて継続的に再評価を実施している。
2015年に、BPAばく露と有害性に関する包括的な再評価を公表し、TDIは50 μg/kg体重/日から4 μg/kg体重/日に引き下げられた。また、この評価は暫定的なもので、米国国家毒物プログラム(CLARITY-BPAプログラム)による2年間の研究の後、再評価することを約束した。
今回の再評価(案)では、
TDIは0.04 ng/kg体重/日に引き下げられた。これは、BPAの免疫系に対する影響に基づいている。動物実験では、細胞性免疫として重要な役割を担っており、アレルギー性肺炎症の発症につながる可能性のある「ヘルパーT細胞」が増加することが報告されている。

参考資料

欧州委員会は、REACH規則におけるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の制限に関する官報を発表した。


DMFは、非プロトン性極性溶媒であり、各種の用途に広く用いられている。有害性について、欧州CLP規則では生殖毒性1B、急性毒性4(吸入、経皮)、眼刺激性2に分類されている。


2018年にイタリアから制限案が提案され、2019年には欧州化学品庁(ECHA)のリスク評価委員会(RAC)が制限案を承認した。また、RACは、DMFの肝毒性や発達毒性を考慮して、ヒトにおける長期間の吸入ばく露における推定無影響レベル(DNEL)を6 mg/m3とし、経皮ばく露におけるDNELは1.1 mg/kg/日に制限することを提案した。


一方、2019年にECHAの社会経済分析委員会(SEAC)は、社会経済的利益とコストを考慮して制限要件を実施するには十分な時間が必要として、制限の適用を24か月間延期することを勧告した。

対象物質
  • N,N-ジメチルホルムアミド
  • CAS No. 68-12-2
  • EC. No. 200-679-5
制限内容
  • 2023年12月12日以降、単一物質、あるいは0.3 %以上の濃度の混合物として販売を禁止し、製造・輸入・販売者はSDS等に、作業者の長期吸入DNELが6 mg/m3、経皮ばく露DNELは1.1 mg/kg/日であることを明記する。
  • 製造業者と川下ユーザーは適切なリスク管理措置を講じ、作業者のばく露量がDNELを下回ることがないような作業環境を提供する。
  • ただし、繊維や紙材料への直接または転写ポリウレタンコーティングプロセスにおける溶剤としての使用については、2024年12月12日から適用されるものとする。ポリウレタン膜の製造および合成繊維の乾式および湿式紡糸プロセスにおける溶媒としての使用については、2025年12月12日から適用されるものとする。

参考資料

  • COMMISSION REGULATION (EU) 2021/2030 of 19 November 2021、amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) as regards N,N-dimethylformamide
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32021R2030

欧州化学品庁(ECHA)は、動物試験代替法の促進の一環として、QSAR Toolboxなどのin silicoツール(コンピューターシミュレーションを使用)を使用した皮膚感作性に関する評価方法についてガイドラインを公表した。


ガイドラインには、化学物質が皮膚感作性物質であるかどうかを評価し、さらに感作性の強度を分類するためのアプローチが含まれており、現在実施されているLLNA法(Local Lymph Node Assay)の代替として動物試験の削減を目指している。

in vitro試験、in silicoツール
ガイドラインでは、皮膚感作性AOP(adverse outcome pathway)に従った3種類のキーイベントである「タンパク質との共有結合」「ケラチノサイトの炎症性反応」「樹状細胞の活性化」に関する3種類のin vitro試験の実施、また、補足情報としてQSAR Toolboxなどのin silicoツール(コンピューターシミュレーションを使用)を使用した皮膚感作性に関する評価が有用であるとしている。
タンパク質との共有結合
OECD TG442Cに準拠したタンパク質への共有結合に関する3つの試験が含まれている。
  • 直接ペプチド反応性アッセイ(DPRA)
  • アミノ酸誘導体反応性アッセイ(ADRA)
  • 動的直接ペプチド反応性アッセイ(kDPRA)
ケラチノサイトの炎症性反応試験質
OECD TG442Dに準拠したケラチノサイトの炎症性反応に関する2つの試験が含まれている。
  • ARE-Nrf2ルシフェラーゼKeratinoSens™試験(EC 216-036-7)
  • ARE-Nrf2ルシフェラーゼLuSens試験
樹状細胞の活性化
OECD TG442Eに準拠した樹状細胞の活性化に関する3つ試験が含まれている。
  • ヒト細胞株活性化試験(h-CLAT)
  • U937細胞株活性化試験(U-SENS TM)
  • インターロイキン-8レポーター遺伝子アッセイ(IL-8 Lucアッセイ)

これらの試験の実施や評価に際しては、OECD TG 497の皮膚感作性評価に関するOECDガイドラインに準拠して実施する。


また、ECHAの皮膚感作性ガイドラインでは、上記の各in vitro試験について、評価方法、評価できる範囲(例えば、金属化合物の評価には適さない、代謝活性化される物質には適さない等)など、試験により特定できる範囲や制限について概要が示されている。

欧州化学品庁(ECHA)は、酸化チタン(TiO2)を含む混合物に対する危険有害性分類表示に関するガイドを公表した。


酸化チタンの分類・ラベル表示については、その要件が2020年2月に変更され、2021年10月1日より、委任規則(EU)2020/2017に従い施行される。

  • 単一物質あるいは混合物において、空気力学的直径が10μm以下の酸化チタン粒子が1%以上含まれている場合、吸入ばく露については、発がん性物質として分類する必要がある(発がん性区分2)。さらに、酸化チタンを含む混合物については、補足ラベル要素「使用時に有害な吸入性粉じんが形成される可能性がある。粉じんを吸い込まないこと。」(EUH212)を表示する必要がある。
  • 分類されていない固体混合物も、その形態や粒子サイズに関係なく、酸化チタンを少なくとも1%含む場合は、EUH212補足ラベル要素を表示する必要がある。
  • 酸化チタンを含む液体混合物は発がん性分類の必要はない。ただし、空気力学的直径が10μm以下の酸化チタン粒子が少なくとも1%含まれている場合は、補足ラベル要素「噴霧すると有害な吸引性ミストが形成される可能性がある。スプレーやミストを吸い込まないこと」(EUH211)を表示する必要がある。

参考資料

ECHA(欧州化学品庁)のリスク評価委員会(RAC)は、科学的根拠が不十分なため、使い捨ておむつに含まれる特定の化学物質が有害リスクをもたらすとは結論できないとした。

背景
2020年10月、フランスは、乳児用紙おむつに含まれるホルムアルデヒド等(下記)の有害化学物質に関するREACH規制における制限を提案した。
  • ホルムアルデヒド
  • ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン(PCDD)
  • ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
  • ダイオキシン様ポリクロロビフェニル(DL-PCB)
  • ダイオキシン様ポリクロロビフェニル(DL-PCB)
  • 非ダイオキシン様ポリクロロビフェニル(NDL-PCB)
RACの結論
フランスによる制限(案)は、科学的証拠が不十分なため、欧州レベルでの評価に十分な情報を提供しているとはいい難い。また、これらの物質は、紙おむつの製造中に意図的に添加された化学物質ではなく、原材料中の残留物や環境からの汚染物質であることに留意する必要がある。
  • 必要とされる科学的根拠
    不確実性を改善するには、サンプル、分析データ等の詳細情報、ばく露の評価等が必要とされている。
  • 業界の自主的管理
    制限案に関する不確実性が解決されるまで、業界による自主的行動がこれらの化学物質の濃度をさらに低減するのに役立つ可能性があると述べ、業界の自主管理の継続を促している。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、REACHの登録更新に際して、分解度試験と遺伝毒性試験が要求される必要条件についてコメントを発表した。

分解度試験
分解度試験は、REACHの付録IX、セクション9.2で要求されているが、ヒトや環境へのばく露が非常に低く、追加の有害性情報がリスク管理の改善につながらない場合に除外できる。ただし、化学物質のライフサイクル全体を考慮に入れた根拠文書が必要になる。
遺伝毒性試験
REACHの付属書VIIに基づいて、年間1トンを超えて登録された物質について、コメットアッセイと小核試験の組み合わせが必要になる場合がある。以下の場合、併用試験が要求される。
  • エームス試験で陽性の場合
  • 染色体異常の懸念や兆候がある場合
  • 登録に必要なin vivo遺伝毒性試験がない場合

参考資料

欧州食品安全機関(EFSA)は、食品接触材料の抗菌用途に用いられる銀ナノ粒子の安全性を評価した。


銀ナノ粒子は食品接触材料の抗菌用途として、プラスチック中に最大0.025%添加されており、平均粒子径は約15 nmで、粒子の99%が直径20 nm未満であった。

溶出量の推定
プラスチックからの溶出について検討した。
銀ナノ粒子を0.025 %(250 mg/kgプラスチック)含有する試験材料を、模擬溶剤として3 %酢酸に浸漬した場合、銀イオンの溶出量は6 μg/kgプラスチックであった。10 %エタノールを用いた場合は0.7 μg/kgプラスチックであった。
食品中の銀イオンについては、50 μg/kg食品と定められており、上記の溶出量はいずれも基準値を下回っていた。
ばく露量の推定
乳児は、43 g/kg体重/日のフルーツや野菜ジュースを摂取し、プラスチック容器からの溶出量を6 μg/kgプラスチックと仮定した場合、銀イオンの摂取量は0.26 μg/kg体重/日と推定された。
幼児では、150 g/kg体重/日の液体飲料を摂取し、プラスチック容器からの溶出量を0.7μg/kgプラスチックと仮定した場合、銀イオンの摂取量は0.11 μg/kg体重/日と推定された。
食品中の銀イオンの一日許容摂取量(ADI)は、欧州では0.9 μg/kg体重/日と定められており、上記のばく露量はいずれもADIを下回っていた。

従って、銀ナノ粒子をポリオレフィン、ポリエステル、スチレン系樹脂など、食品接触材料に最大0.025%添加しても、消費者に対して安全上の懸念はないと結論している。

参考資料

欧州食品安全機関(EFSA)は、細胞の染色体数の増加や減少を誘発する染色体異数性誘発性物質の検出法やリスク評価に関するガイダンスを公表した。

遺伝毒性試験
遺伝毒性はエンドポイントにより、遺伝子突然変異、染色体異常、染色体異数性に分類され、以下のような試験により検出される。
  • 細菌を用いた復帰突然変異試験(エームス試験)
  • 哺乳類細胞を用いた遺伝子突然変異試験
  • 哺乳類細胞を用いた染色体異常試験
  • 哺乳類細胞を用いた小核試験
  • トランスジェニック動物を用いた遺伝子突然変異(TGR)試験
  • コメット試験
このガイダンスは、染色体異数性のみを誘発する物質について(遺伝子突然変異や染色体異常は誘発しない)、異数性に関するメカニズム、試験方法、リスク評価について述べられている。
染色体異数性の検出
エームス試験が陰性、in vitro染色体異常試験で染色体異常は陰性であるが、異数性が認められた場合、次のステップとして以下の対応が必要になる。
in vivo哺乳動物赤血球小核試験(OECD TG 474)を実施して、異数性について検討する。
  • 陽性の場合:in vivoにおいて異数性を誘発する物質であり、リスク評価が必要である。
  • 陰性の場合:最大耐量を投与した試験において異数性が見られなかった場合、in vivoで異数性を惹起する懸念はないと結論される。ただし、被験物質が骨髄にばく露されている証拠が必要である。

課題として、化学物質の吸収を考慮すると、化学物質が吸収される胃や腸の細胞への影響について評価する必要があり、試験系の開発が望まれる。

参考資料

欧州食品安全機関(EFSA)は、食品や飼料(食品・飼料添加物、食品接触材料、農薬等)に添加される粒子状物質の評価に関する技術ガイダンスを公表した。


このガイダンスは、従来のリスク評価に加えてナノ粒子等に特異的な評価を追加すべきかどうかを確認するためのもので、物理化学的特性として溶解度、粒子特性、安全性試験情報など、ナノ粒子を含む粒子状物質が適切に評価されていることについて実証を求めている。

  • 想定される使用条件において、製品(食品や飼料等)が消化管で完全に溶解し、消費者等が粒子状物質にばく露される可能性がない場合は、従来の安全性評価で問題なく、粒子特性等に関する評価は必要ない。
  • 粒子サイズが500 nm以上で、少なくとも1つの寸法が500 nm未満の粒子が10 %未満(粒子数として)の場合は、従来のスクリーニング方法で十分である。
  • 安全性情報について、理想的には、市販される製品と安全性研究で用いられた試験材料の粒子特性等を比較評価する必要がある。また、試験材料が市販の製品と同じ製造プロセス、製造条件で製造されたこと、試験材料が市販の製品の仕様に準拠していることを実証する必要がある。

参考資料

8物質がREACHの高懸念物質リスト(SVHC)に追加され、現在、219物質が含まれている。


1)2-(4-tert-ブチルベンジル) プロピオンアルデヒドとその立体異性体

  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:洗浄剤、化粧品、香料入りの製品、ポリッシュ、ワックスブレンド

2)オルトホウ酸ナトリウム塩

  • CAS RN:13840-56-7
  • 生殖毒性が懸念される
  • 用途:溶剤および腐食防止剤(REACH登録なし)

3)下記3物質

2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン1,3-ジオール(BMP)
  • CAS RN:3296-90-0
  • 発がん性が懸念される
  • 用途;ポリマー樹脂の製造およびフォーム(OCPF)1成分
2,2-ジメチルプロパン-1-オール、トリブロモ誘導体/ 3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)-1-プロパノール(TBNPA)
  • CASRN:36483-57-5
  • 発がん性が懸念される
  • 用途:プラスチック製品のポリマー製造製造中間体
2,3-ジブロモ-1-プロパノール(2,3-DBPA)
  • CAS RN:96-13-9
  • 発がん性が懸念される
  • 用途:中間体として登録されている

4)グルタルアルデヒド

  • CAS RN:111-30-8
  • 呼吸器感作性が懸念される
  • 用途:殺生物剤、皮革のなめし、X線フィルム処理、化粧品

5)中鎖塩素化パラフィン(MCCP)

  • オリゴマー化からのC12に富む分岐アルキル鎖を有するアルキル化生成物(主にパラ位)、任意の個々の異性体および/またはそれらの組み合わせ(PDDP)を含む
  • 生殖毒性、内分泌かく乱特性(ヒト健康と環境影響)
  • 用途:潤滑剤添加剤および燃料システムクリーナーの調製

6)フェノール

  • 炭素鎖長がC14からC17の範囲内にある80%以上の線状クロロアルカンからなるUVCB物質
  • PBTおよびvPvB
  • 用途:難燃剤、プラスチック、シーラント、ゴム、繊維の可塑化添加剤

7)1,4-ジオキサン

  • CAS RN:123-91-1
  • 生殖毒性、内分泌かく乱特性(ヒト健康と環境影響)
  • 用途:溶剤

8)4,4 ‘-(1-メチルプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールB)

  • CAS RN:77-40-7
  • 内分泌かく乱特性(ヒト健康と環境)
  • 用途:フェノール樹脂およびポリカーボネート樹脂の製造(REACH 登録なし)

参考資料

欧州委員会はレゾルシノールについて、内分泌かく乱作用が認められREACH規則の第57条(f)※に該当することから高懸念物質(SVHC)に指定することをWHOに通告した。


 ※第57条(f)は内分泌かく乱作用や生物蓄積性等が疑われる物質でケースバイケースで判断される。

レゾルシノールの内分泌かく乱作用
  • in vitro試験において、レゾルシノールは甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)を阻害した。
  • 動物試験においても、レゾルシノールを投与するとTPOの阻害が認められた。
  • これらの甲状腺機能の低下は、ヒトでも発生する可能性がある。また、甲状腺ホルモンは胎児の脳の発達に不可欠であることから、甲状腺ホルモンを阻害する物質は神経発達を阻害することにより、記憶や学習などの神経機能に影響を与える可能性がある。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、スポーツ施設で用いられる人工芝用ゴム顆粒充填材について、スクリーニングリスク評価を実施した。

背景
人工芝用ゴム顆粒充填材については、オランダが多環芳香族炭化水素に対する懸念を示したことから、REACH規則における制限案が検討されている。
一方、ゴム顆粒は、主に使用済みタイヤを原料としているが、ゴム顆粒にはフタル酸エステル類のように、タイヤの可塑剤として使用されていない物質も含まれていることから、その他のリサイクルゴム製品に由来する可能性が指摘されており、原材料に関する調査も今後の課題とされている。
スクリーニングリスク評価
  • ヒト健康
    ヒト健康に対するリスク評価の対象として、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、セレン、ベリリウム、マグネシウム、バナジウム、リチウム、水銀、N-フェニル-1-ナフチルアミン(PANA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)について実施した。
    PANAとNMPについては、ゴム顆粒中の濃度が不明であるため、リスク評価できなかった。また、コバルトと亜鉛については、比較的含有量が多いことから、さらなるリスク評価が必要と判断された。
  • 環境影響
    ゴム顆粒充填材に含まれる、カドミウム、コバルト、銅、鉛、亜鉛、4-tert-オクチルフェノ-ル、4 ,4′-イソプロピリデンジフェノール (BPA)、ビス (2-エチルヘキシル)フタレート (DEHP)、フタル酸ベンジル ブチル (BBP)、ベンゾチアゾ-ル-2-チオールについて、環境へのリスクをさらに評価する必要があると結論している。

さらに、ECHAは、将来的に物質の複合効果についても考慮すべきであると提案している。

参考資料

EFSA(欧州食品安全機関)は、食品添加物用途における酸化チタンの安全性について、2016年に公表した評価結果を改訂し、より多くの研究の必要性が示された。

背景
酸化チタンは、食品添加物に関する欧州議会及び閣僚理事会規則(EC)No 1333/2008の附属書IIに従って食品添加物E171として認可されており、2016年に再評価されている。
2016年の再評価では、生殖器系への影響に関する追加研究、食品添加用途における酸化チタンの粒子径や粒度分布等の材料特性に関するデータギャップが指摘された。
また、2019年には、EFSAは酸化チタンへのばく露に関するリスクの見直し、さらにオランダ当局は免疫毒性の必要性を提案した。
再評価
今回の再評価では、酸化チタンナノ粒子で得られたデータや拡張1世代生殖毒性試験(EOGRT)が新たに追加されている。
  • 食品添加用途の酸化チタンでは、粒子径100nm未満の粒子数は50%未満であり、粒子径30 nm未満の粒子数は1%未満であった。
  • 酸化チタン粒子の胃腸吸収は低いものの、体内に蓄積する可能性がある。
  • 一般毒性試験では、1,000 mg/kg体重/日までの用量で毒性兆候は認められなかった。
  • EOGRT試験では、最高用量である1,000mg/kg体重/日までの用量において生殖発生毒性は観察されなかった。しかし、軽微な免疫系への影響、消化器系への影響が認められた。
  • 遺伝毒性について、遺伝子突然変異は誘発しないと結論しているが、酸化チタンはDNA鎖切断と染色体損傷を誘発する可能性があることから、遺伝毒性の懸念は完全には払拭されていない。

入手可能なすべての情報に基づいて評価した結果、遺伝子毒性の懸念を排除することはできず、多くの不確実性を考慮して、食品添加物用途において酸化チタン(E171)は安全であるとは見なされないと結論している。

参考資料

欧州議会は、内分泌かく乱物質に関する調査研究の充実や規制強化に関する包括的な枠組みを決議した。

背景
  • 内分泌かく乱物質(EDC)は、不妊、発がん、奇形、甲状腺機能、神経機能、肥満・代謝、インスリンやグルコースの恒常など、ヒトや野生動物の内分泌関連の疾患・異常を誘発する。
  • 約800種の化学物質が、EDCとして内分泌かく乱作用を有することが知られているが、これらの化学物質は一部に過ぎない。
  • フランス、スウェーデン、デンマーク、ベルギーなどの加盟国は、国レベルで措置を講じているが、欧州レベルでの効果的かつ包括的なアプローチが必要である。
今後の対応
欧州議会は、欧州委員会、欧州化学品庁(ECHA)、加盟国に対して、以下のような対応を求めている。
  • EDCは、発がん性、変異原性・生殖毒性を有する物質(CMR物質)と同等の懸念物質として法規制を強化し、EDCに対するヒトや環境ばく露を最小限に抑える必要がある。
  • REACH規則、CLP規則、化粧品規則、玩具指令、食品接触材料規則において、CMR物質と同様に位置づけ、さらに複合ばく露を考慮した規制強化を要請する。
  • ヒトや野生動物におけるEDCの適切なバイオモニタリングと、飲料水を含む環境中のEDCのモニタリングを実施する。
  • EDCに関する研究として、特にエピジェネティック、トランスジェネレーション効果、マイクロバイオームへの影響、EDCの用量反応特性、また安全な代替手段に関する研究を促進する。

参考資料

欧州委員会の消費者安全科学委員会(SCCS)は、衣料品中に存在するビスフェノール A (BPA)の安全性について検討結果を公表した。

衣料品中のBPAについて
主にポリエステルとスパンデックス衣料においてBPAの発生が報告されている。BPAは、衣類の仕上剤に含まれる酸化防止剤の製造中間体として、また染料の製造中間体として使用されており、さらに繊維のコーティングにビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレートオリゴマーなどのBPA誘導体が用られている。
衣類からのBPAばく露
人工汗を用いた衣類からの溶出試験の結果に基づいて、汗を吸った衣服を2時間着用した場合のBPAばく露量は、成人では1.56〜9.90 ng / kg体重/日と推定された。幼児の場合は、衣類を舐めることによる経口ばく露も想定されることから成人よりばく露量は大きく、2.37〜14.8 ng / kg体重/日と推定された。
これらのばく露量は、食事を介したばく露量の25分の1であった。
衣料品中のBPAに関するリスク評価
各種毒性試験から、BPAの長期間ばく露に関する無毒性量は6.09 µg / kg体重/日と推定された。
無毒性量(6.09 µg / kg体重/日)とばく露量(成人4.33ng/kg体重/日、幼児6.54ng/kg体重/日)を比較すると、無毒性量は推定ばく露量の1406倍(成人)と931倍(幼児)高い値であり、十分な安全マージン(margin of safety, MOS)が確保されていることからリスクはないと判断された。

欧州化学品庁(ECHA)は、欧州委員会に対し、7物質をREACH規制の認可リストに追加することを提案している。

  • シクロシロキサンD4、D5、およびD6 : ヒト健康と環境影響が懸念される。電子機器の工業生産や閉鎖系でのドライクリーニングなど、一部の専門的な用途で使用されている。
  • 水素化ターフェニル : 環境影響が懸念される。接着剤、シーラント、コーティング、インク、塗料の生産工場において熱伝達流体として使用されている。
  • ジシクロヘキシルフタレート(DCHP) : ポリマーの可塑剤等に使用されている。生殖毒性、内分泌かく乱作用が懸念される。
  • 八ホウ酸二ナトリウム : 塗料、接着剤、建材に用いられている。生殖毒性が懸念される。
  • トリメリット酸無水物(trimellitic anhydride、TMA) : 呼吸器感作性が懸念される。中間体用途のみの使用であるが、類似構造のエポキシ樹脂硬化剤の代替品として使用される可能性があるため、類似グループとして規制される。

参考資料

欧州委員会の消費者安全科学委員会(SCCS)は、内分泌かく乱作用を有する4物質について、化粧品用途における安全性評価結果を公表した。

  • レゾルシノール:
    ヘアローションおよびシャンプーで最大1.25%、および髪およびまつげ用の製品で酸化染毛剤として最大0.5%を使用しても安全である。
  • プロピルパラベン:
    化粧品の防腐剤として、最大0.14%まで安全である。
  • BP-3:
    UVフィルターとして、ボディクリーム、フェイスクリーム、ハンドクリーム、リップクリーム等に配合されるが、最大濃度2.2%まで安全である。
  • オクトクリレン:
    UVフィルターとして、ボディクリーム、フェイスクリーム、ハンドクリーム、リップクリーム等に配合されるが、最大濃度10%まで安全である。

欧州委員会の消費者安全科学委員会(SCCS)は、ナノサイズの銅およびコロイド銅の安全性について、メーカーから提出されたデータを評価した。


メーカー9社に対してデータや追加情報の提供を要求した結果、2社は製品を撤回しため、7社の29製品について評価を実施した。

さらに、3製品については、抗菌活性を主張しているが効力のデータはなく、安全性についても関連するデータのみであり、提供された情報に基づいてこれらの製品の安全性を評価することはできなかった。

結論
提供された情報の多くは銅に関連したデータであったが、ナノフォームのデータと判断することはできず、ナノ銅とコロイド銅を最大濃度1%含有する頭髪、頭皮および口腔衛生製品の安全性について、提供された情報から安全性評価を実施することはできなかった。

さらに、科学論文では、ナノサイズの銅粒子が全身に取り込まれる可能性があり、肝臓や脾臓に蓄積する可能性が示唆されている。また変異原性、免疫毒性、腎毒性も懸念されている。これらの情報は、化粧品用途におけるナノ銅・コロイド銅の使用について、さらなる安全性評価が必要であると結論している。

参考資料

欧州委員会は、消費者安全科学委員会(SCCS)に対して、ホルムアルデヒドに関する警告の閾値が適切か否か、科学的見解を求めている。

背景
  • ホルムアルデヒド(CAS No. 50-00-0)は、発がん性区分1B、皮膚感作性区分1に分類されている。
  • 2014年11月、SCCSはネイル硬化剤に含まれるホルムアルデヒド(最大濃度約2.2%)の安全を検討したが、化粧品に関する作業部会では、代替物質が利用可能であると結論され、ホルムアルデヒドは化粧品で禁止された。(禁止物質リスト附属書IIに追加された)
  • 一方、附属書V(防腐剤)には、いわゆるホルムアルデヒド放出剤のようにホルムアルデヒドを放出する物質も含まれており、これらの製品については、ホルムアルデヒドを0.05%以上含有する場合、「ホルムアルデヒド含む」等のラベルや警告が求められている。
閾値について
2020年に欧州委員会は、ホルムアルデヒドが非常に低濃度で接触皮膚炎を惹起するとの情報を入手したことから、現行の閾値である0.05%未満でも接触皮膚炎を引き起こす可能性が否定できないと考えられ、警告に関する閾値の見直しを求めている。

参考資料

北欧閣僚理事会 (Nordic Council of Ministers)は、タイヤの摩耗により発生するマイクロプラスチック粒子の環境汚染対策に関する北欧の取り組みについて報告書を公開した。


北欧では、マイクロプラスチックの発生原因としてタイヤの摩耗が注目されている。タイヤの摩耗により発生したマイクロプラスチックは、道路の排水として海洋に流出するが、いずれの北欧諸国においても、道路から海洋へのマイクロプラスチックの流出に対して特別な対策は実施されていない。


本報告書では、タイヤの摩耗によって発生するマイクロプラスチック対策として必要とされる取組みが述べられている。

  • 環境中のタイヤ粒子を定量化するための標準化された分析法を開発する。
  • タイヤから発生するマイクロプラスチック粒子の環境挙動に関する研究として、モニタリング等の研究プロジェクトを開始する。
  • 排水からマイクロプラスチック粒子を除去するための水処理技術に関する研究を推進する。
  • 道路やトンネルについて、排水処理に関する適切な規制整備に取組む。
  • 北欧諸国での研究や技術を欧州レベルに展開することにより、欧州全体での協力体制を構築する。
  • コストやベネフィットを考慮したマイクロプラスチック汚染対策が必要になるため、経済や政策分野への影響についても検討する。

参考資料

フランス

フランス食品環境労働安全衛生庁(ANSES)は、ビスフェノールA(BPA)の代替としてビスフェノールB(BPB)が使用されていることに対して、BPBもBPAと同様に内分泌かく乱作用を示す物質であり、規制を強化すべきと警鐘している。

ANSESにおけるBPBの評価
2019年にフランスにおける内分泌かく乱物質戦略としてBPBを評価し、以下のように結論している。
  • ビスフェノール B はエストロゲンの産生を増加させ、エストロゲン受容体を活性化することによりエストロゲン作用を示す。
  • また、男性の生殖器系に対する影響として、精子数の減少、男性の生殖器の重量減少をもたらす。
  • これらの作用は内分泌かく乱作用を示すものである。
これらの内分泌かく乱作用は、BPAと同等かわずかに強いものであり、さらに他のビスフェノール類(BPA、BPS等)との累積作用も懸念される。
BPBの規制強化
ビスフェノールBは、欧州域外では、ビスフェノールAおよびビスフェノールSの代替として用いられており、欧州でもバイオモニタリングにより生体から検出されている。
今後、REACH規則の下でSVHC(高懸念物質)に指定することにより、輸入製品に対して閾値を設け(0.1%)、代替品としてビスフェノールBの使用や製造を防止する必要がある。

参考資料

フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、ナノ粒子径の酸化チタンについて、作業者のばく露限界値(OEL、Occupational Exposure Limit)を公表した。

背景
酸化チタン(ナノ)は、紫外線吸収剤や光触媒として種々の産業で広く使用されており、フランスでは毎年17,000トンの輸入・製造の実績がある。

一方、吸入ばく露された場合、肺の炎症を引き起こし、発がんを引き起こす恐れが指摘されている。

OEL
ANSESは、肺への影響を考慮して以下のようにOELを設定した。
  • 15分OEL:
    短時間のばく露限界(15分間の平均値)について、4μg/m3
  • 8時間OEL:
    時間加重平均(8時間の平均値)については、0.8μg/m3

参考資料

日本

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定された。


法案は、プラスチック廃棄物の排出抑制、再資源化に資する環境配慮設計、ワンウェイプラスチック使用の合理化、プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化等を基本方針として、プラスチック資源循環への取組みを促進するものである。


以下、報道発表資料から抜粋します。

  • 環境配慮設計指針の策定
    製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した設計であることを認定する仕組み、リサイクル材の利用に当たっての設備への支援等
  • ワンウェイプラスチックの使用の合理化
    ワンウェイプラスチックの提供事業者(小売・サービス事業者など)が取組むべき判断基準を策定等
  • 市区町村の分別収集・再商品化の促進
    プラスチック資源の分別収集を促進
  • 製造・販売事業者等による自主回収の促進
    製造・販売事業者等がプラスチック製品等を自主回収・再資源化する計画等
  • 排出事業者の排出抑制・再資源化の促進
    排出事業者が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定等

参考資料

お問い合わせ

大阪オフィス(本社)

〒541-0043
大阪市中央区高麗橋4丁目6番17号
住化不動産横堀ビル7F

Tel: (06) 6220-3364 / Fax: (06) 6220-3361

担当者:樋口 敏浩

本件に関するお問い合わせ

PAGE TOP