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  • GHS・SDS・法規制ニュース

GHS・SDS・法規制ニュース(2023年)

GHS分類、SDS作成、化学品管理に関連した各国の法規制情報をご提供いたします。

国連

国連欧州経済委員会(UNECE)は、国連GHS文書の改訂10版を公表した。
今回の改訂は、2022年12月の危険物輸送やGHSに関する専門家委員会で採択された、国連GHS文書改訂9版に対する修正案が含まれている。

鈍性化爆発物

鈍性化爆発物に関する分類手順が改訂された。(第2.17章)
これまでは、爆発可能性や補正燃焼速度の測定データに基づいて分類されていたが、改訂10版では、これらの測定データに加えて、熱不安定性、ニトロセルロースの含有や添加に伴う安定性が加味されている。

非動物試験法の使用

    ヒト健康影響の皮膚腐食/刺激性(第3.2章)、眼の損傷/刺激性(第3.3章)、呼吸器・皮膚感作性(第3.4章)の各GHS分類では、in vitro(試験管内)/ex vivo (生体外)データや定性的な構造活性相関(構造アラート、SAR)、定量的な構造活性相関(QSAR)、リード・アクロス等の非動物試験について、ヒトデータ、動物試験データとともに、段階的なGHS分類アプローチとして追加された。

金属および金属化合物の水生環境有害性

    金属や金属化合物については、物質の溶解性や金属イオンの解離性が生物濃縮性や蓄積毒性に影響することから、例えばpHによる溶解性の差異等の情報が重要になる。これらの評価戦略、ガイダンスやツールについて、付録9および10に解説が追加されている。

参考資料

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議「FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives(JECFA)」は、アスパラテームについて、IARC(国際がん研究機関)がグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類したが、これまで通りの一日許容摂取量(ADI)の40mg/kg体重で安全性に問題ないと結論した。

アスパラテーム

1980年代以降、ダイエット飲料、チューインガム、ゼラチン、アイスクリーム、ヨーグルトなどの乳製品、朝食用シリアル、歯磨き粉、咳止めドロップやチュアブルビタミンなどの医薬品などに、人工甘味料として広く使用されている。

発がん性評価(IARC)

    ヒトではアスパラテームと発がん性の関連性は報告されていない。
    動物実験では、ラットの長期間投与試験において、リンパ腫、白血病、泌尿器系(腎盂、尿管、膀胱)の移行上皮がんが増加した。
    これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

安全性評価(JECFA)

    アスパラテームのADIは、ラットの104週間投与試験のNOAELの4000mg/kg体重に基づいて、安全係数を100として、ADIの40mg/kg体重が設定されている。
    ヒトの推定ばく露量について、JECFAはアスパラテームの平均摂取量を、子供で10mg/kg体重、大人で5mg/kg体重と推定し、摂取量が多いケースでも、子供で20mg/kg体重、大人で12mg/kg体重と推定され、いずれもADIを下回っていた。
    従って、アスパルテームの200~300mgを含むダイエットソフトドリンクの場合、他の食品からの摂取がないと仮定すると、体重70kgの成人がADIを超えるには、1日あたり9~14本を生涯にわたり摂取する必要があり、安全性に問題はないと考えられる。

参考資料

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、9種類のコバルト、アンチモン、タングステン化合物(金属コバルト、コバルト(II)塩、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II、III)、硫化コバルト(II)、その他のコバルト(II)化合物、三価アンチモン、五価アンチモン、兵器グレードのタングステン(ニッケルとコバルトを含む合金)の発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。

コバルト

コバルトは、切削工具や研削工具の製造、顔料、塗料、着色ガラス、医療用インプラント、電気めっき、リチウムイオン電池の製造に使用されている。職業ばく露は、主にコバルトの精製およびコバルト化合物および歯科材料の製造、ダイヤモンドコバルト工具の使用、コバルト顔料によるプレート塗装、ニッケル水素電池の製造、超硬合金の製造、および電子廃棄物のリサイクルに発生すると予想される。一般の人々は、食物、周囲の空気、タバコの煙、および医療用インプラントを介してばく露される。

動物実験において、金属コバルト、コバルト(II)塩、酸化コバルト(II)では良性や悪性腫瘍が発生したことから、グループ2Aあるいは2Bに、酸化コバルト(II、III)、硫化コバルト(II)、その他のコバルト(II)化合物については、発がん性に関する充分な証拠がないことから、グループ3に分類している。

  • 金属コバルト:グループ2A(probably carcinogenic to humans)
  • コバルト(II)塩:グループ2A(probably carcinogenic to humans)
  • 酸化コバルト(II):グループ2B(possibly carcinogenic to humans)
  • 酸化コバルト(II、III):グループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
  • 硫化コバルト(II):グループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
  • その他のコバルト(II)化合物:グループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
アンチモン

    アンチモンは、難燃剤、鉛蓄電池、鉛合金、プラスチック、ブレーキパッド、クラッチディスク、ガラス、セラミック、および爆発物のプライマーとして使用され、五価アンチモン化合物はリーシュマニア症の治療に使用される。労働者は、製錬、アンチモン化合物の製造、ガラス、繊維、電池の製造、および電気廃棄物の処理中にばく露される可能性がある。その他、水、空気、土壌、消費者製品、タバコを介してもばく露される。

    動物実験では、三酸化アンチモンのばく露により、肺の細気管支肺胞上皮がん、扁平上皮がん、皮膚の線維肉腫、悪性リンパ腫等が発生したことから、三価アンチモンをグループ2A、五価アンチモンをグループ3に分類している。

    • 三価アンチモン:グループ2A(probably carcinogenic to humans)
    • 五価アンチモン:グループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
兵器グレードのタングステン

    動兵器グレードのタングステン(ニッケルとコバルトを含む合金)は、装甲貫通弾薬に使用される。職業ばく露は軍需品の製造中に発生する可能性があり、軍人や民間人は、発砲や衝撃の際に発生する金属エアロゾル、破片によるケガが考えられる。

    動動物実験では、兵器グレードタングステンの筋肉内埋入により、横紋筋肉腫が発生したことから、グループ2Bに分類している。

    • 兵器グレードのタングステン(ニッケルとコバルトを含む合金) :グループ2B(possibly carcinogenic to humans)

参考資料

米国

2023年12月に実施された発生・生殖毒性物質特定委員会(DARTIC)において、BPSによる雌の生殖毒性が懸念されていることから、カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、ビスフェノールS(BPS、CAS RN 80-09-1)をProposition 65のリストに追加した。

用途

BPSは、硬質プラスチック製品や衣類、合成繊維の原料として使用されている。感熱紙の着色剤、缶詰の保護コーティングにも含まれ、レジのレシート、食品、赤ちゃん用のボトルなど、さまざまな製品から検出されている。

ヒトへの影響

疫学調査において、BPSと妊娠糖尿病については、ばく露量と糖尿病の発症に有意な関連性は認められなかった。BPSと甲状腺ホルモンについては、妊娠に伴って甲状腺刺激ホルモン(TSH)の高値、甲状腺ホルモン(T3、T4)の低値が観察されたが、BPSばく露との関連性は見られなかった。性ホルモンについても関連性は認められなかった。BPSレベルが高い女性で多嚢胞性卵巣症候群の発生率が高いことがケースコントロール研究で報告されている。その他、BPSばく露により妊娠中の体重増加抑制、抗ミュラー管ホルモンの減少、卵巣予備能の減少、および月経の遅延が示唆され、流産の発生率の増加が見られた。子宮筋腫に関しては、BPSレベルが高いと子宮筋腫の発生リスクが有意に低いとする一方で、既存の子宮筋腫がある女性では、BPSレベルが高値を示すという対立する証拠がある。BPSばく露と子宮内膜症、胎盤の血管形成/血行機能の指標、および妊娠高血圧障害との関連は見られなかった。
このように、BPSによる女性の生殖器や妊娠への影響に関する研究において、BPSと生殖能に明確な関連性は認められていない。

動物への影響

動物試験において、BPSが卵巣、子宮、内分泌ホルモン、発情周期、乳腺、生殖能等に影響することが報告されている。以下、概要を抜粋する。

  • 卵巣:BPSばく露により、妊娠マウスでは卵母細胞の分割に影響すること、ラットでは壊死性の嚢胞性卵胞が増加する等が報告され、ハムスターでも同様の影響が認められている。
  • 子宮:マウスにおいて、子宮腔の狭窄、子宮腺の増加、子宮内膜面積の減少等、萎縮性の変化が認められている。
  • 内分泌ホルモン:BPSばく露により、ラット、マウスでは黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)が低下すること、また、血清テストステロンが増加することが報告されている。
  • 発情周期:ラットやマウスにおいて、発情開始の遅れや発情周期の遅延が認められた。
  • 乳腺:乳腺への影響として、乳芽や乳管内過形成の増加、炎症性変化、小葉過形成の増加が認められている。
  • 生殖能:ラットやマウスにおいて、着床数の減少、胎児数の減少が見られ、魚類でも、産卵期間中の卵の減少、孵化率の低下、胚の孵化までの時間の増加等が報告されている。

参考資料

カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition65の発がん物質リストに3物質を追加した。

対象物質

コールタールピッチ(Coal-Tar Pitch)
フルオロエデナイト(Fluoro-Edenite Fibrous Amphibole、繊維質のフッ素エデン閃石)
炭化ケイ素ウィスカー(Silicon Carbide Whiskers)

国際がん研究機関(IARC)は、コールタールピッチとフルオロエデナイトはグループ1(Carcinogenic to humans)、炭化ケイ素ウィスカーはグループ2A(Probably carcinogenic to human)に分類している。

IARC評価
  • コールタールピッチ

コールタールピッチを使用した舗装工事や屋根工事に従事した作業者の発がん性について、十分な証拠があると結論している。この評価では、コールタールピッチにばく露された舗装工事作業者や屋根工事業者を対象とした調査において、肺がんのリスクが高まる傾向が示唆された。また、膀胱癌、喉頭癌、非黒色腫性皮膚がんの死亡率が高かったことも報告されている。


  • フルオロエデナイト

イタリアのシチリア島で、中皮腫の発生増加が認められた。一般に中皮腫の発生について、約70〜90%がアスベストへのばく露に起因すると考えられるが、この地域ではアスベストのばく露がなく、他方、フルオロエデナイトがこの地域の環境中から検出され、関連性が強く示唆された。また、肺がんに関しては、中皮腫と比較して発生が低いが、女性では肺がんによる死亡率にわずかに増加し、男性でもわずかに観察されている。


  • 炭化ケイ素ウィスカー

炭化ケイ素製造工場における疫学調査では、作業者の肺がんや中脾腫の発生増加は見られず、ヒトにおける発がん性の証拠は認められなかった。一方、動物実験では、雌ラットに腹腔内や胸膜内に投与した結果、中皮腫の発生率が著しく増加した。しかし、雌ラットに気管内投与した実験では、発がん性は認められなかった。

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は、鉛塗料から発生する粉じんによる子供の健康影響が懸念されることから、規制の強化を提案している。

背景
  • 1978年:鉛による健康影響を懸念して、家庭用の鉛塗料を禁止した。
  • 2001年:粉じん鉛ハザード基準(DLHS)と粉じん鉛除去レベル(DLCL)を設定し、1978年以前に建設された住宅の売買等に際して、鉛塗料の危険性等に関する情報開示が義務付けられた。
  • 2019年:床のDLHSが10μg/ft2、窓枠のDLHSが100μg/ft2に引き下げられた。
規制の強化

米国EPAは鉛塗料のリスクについて、1978年に住宅用の鉛塗料が禁止されたが、1978年以前に建設された3,100万戸の住宅では、依然として鉛塗料が使用されていると考えられる。そのうち 380万戸には 6歳未満の子供が 住んでおり、子供のIQの低下、成長の遅れなど、生涯にわたって健康影響を引き起こす可能性が懸念される。鉛塗料が劣化や損傷することにより鉛粉じんが発生し、さらに手を舐める等の幼児行動は、鉛を含む粉じんを口から摂取するリスクが高くなる。

以下のような規制強化が提案されている。

  • DLHS:床の10μg/ft2、窓枠の100μg/ft2について、報告可能なレベルに引き下げる。
  • DLCL:床の10μg/ft2、窓枠の100μg/ft2、窓の溝の400μg/ft2について、床を3μg/ft2 、窓枠を20μg/ft2、窓の溝を25μg/ft2に引き下げる。

参考資料

米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition 65の発がん物質リストに3物質を追加する予定である。

対象物質
  • アントラセン(CAS RN 120-12-7)
  • 2-ブロモプロパン(CAS RN 75-26-3)
  • 亜リン酸ジメチル(CAS RN 868-85-9)

これらの物質について、国際がん研究機関(IARC)は、動物試験において発がん性が認められたことからグループ2A(probably carcinogenic to humans)あるいはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)であると結論している。

IARCの評価
  • アントラセン

多環芳香族炭化水素で、主に染料や顔料、花火、塗料、木材防腐剤、殺虫剤、有機化学薬品の製造中間体として使用されている。また、タバコの煙、バイオマス燃焼、運輸・産業からの排出物として生成され、食品からも見つかっており、環境汚染物質として広範囲に認められる。
ヒトに対する発がん性を示す証拠は不十分であるが、動物実験では発がん性を示す十分な証拠があることから、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

  • 2-ブロモプロパン

ドライクリーニングや接着剤に使用される溶剤であり、1-ブロモプロパン(オゾン層破壊溶剤の代替品として 1990 年代から使用されている)の不純物としても発生する。
ヒトに対する発がん性を示す証拠は不十分であるが、実験動物における発がんの十分な証拠(異常に高い発がん活性が指摘されている)およびメカニズム研究による証拠に基づいて、グループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。

  • 亜リン酸ジメチル

接着剤、潤滑剤、殺虫剤、医薬品の製造の中間体として、また油や石膏の安定剤、鋼の腐食防止剤、難燃剤として使用されている。
ヒトに対する発がん性を示す証拠は不十分であるが、動物実験では発がん性を示す十分な証拠があることから、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は、ペルクロロエチレン(テトラクロロエチレン)(PCE)について、消費者製品における使用を禁止し、その他の用途についても、職業ばく露に関する厳しい要件を提案している。

対象物質

ペルクロロエチレン(CAS RN 127-18-4)
溶剤として、フッ素化合物の製造、石油製造、ドライクリーニング、エアロゾル脱脂など、工業用途、消費者製品に広く用いられている。
有害性として、神経系への影響や発がん性が懸念される。神経毒性として、視覚や認知機能の障害や色の識別低下が発生する。その他、中枢神経系の抑制、腎臓や肝臓への影響、免疫毒性、発生毒性、発がん性が懸念される。

規制状況

米国EPAは、2016年にTSCAに基づくPCEのリスク評価を開始し、2020年には製造(輸入を含む)、加工、流通、使用、廃棄まで範囲を拡大してリスク評価を実施した。その結果、職業ばく露については、直接PCEを取り扱う作業者に加えて、周辺の間接的にばく露される従業員やドライクリーニング施設の従業員の子供に、またPCEを含有する製品を使用した消費者に対して、健康影響が懸念されると結論された。

規制強化(案)

以下のように広範囲での禁止が提案されている。

  • 工業用および消費者向けのPCEの製造 (輸入を含む)、加工、流通の禁止
    ドライクリーニング、繊維加工、木製家具製造、写真フィルム、エアゾール潤滑剤の溶剤、カーペットクリーニング、自動車用途、接着剤、塗料、コーティング、溶接等
  • なお、ドライクリーニングに関連する代替品への移行については、10年間の移行期間が設定されており、段階的に廃止される。

また、禁止の対象とならない特定の使用条件については、吸入ばく露濃度の制限や皮膚接触防止の要件が提案されている。

  • 8時間時間加重平均値(TWA):0.14 ppm(0.98 mg/m3)(活動時は0.07 ppm)
    なお、従来の8時間TWAは100 ppmであった。

  • 皮膚への接触防止(作業の自動化、汚染された作業区域と非汚染区域の分離、密閉系による輸送ライン等)

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は、塩化メチレンについて、すべての消費者製品における使用を禁止し、その他の用途についても、職業ばく露に関する厳しい要件を提案している。

対象物質
  • 塩化メチレン(CAS RN 78-09-2)
  • 溶剤として、蒸気脱脂、塗料、コーティング、自動車製品など、工業用途、消費者製品などに広く用いられている。
  • 有害性として、神経系への影響や発がん性が懸念され、特に子供に対して、急性ばく露では中枢神経への影響、慢性ばく露では肝臓への影響が懸念される。
規制状況

2019年、米国EPAは消費者向けの塗料・コーティング除去のための塩化メチレンの製造、販売を禁止した。これは、消費者によるコーティング除去作業中に、塩化メチレンに起因した死亡事故が発生したためである。

規制強化(案)

以下のように広範囲での禁止が提案されている。

  • 工業用・商業用の溶剤としての用途の禁止(蒸気脱脂用、クリーニング用、エアゾールスプレー脱脂剤等)
  • 消費者用途の禁止(エアゾール脱脂剤、クリーナーの溶剤、接着剤・シーラント、塗料・コーティング用のブラシクリーナー、接着剤・コーキング除去剤、金属脱脂剤、カーケア製品(エアコン用機能性流体や脱脂剤)、潤滑剤・グリース、コールドパイプ断熱材、芸術品・工芸品・趣味の材料の接着剤など、すべての消費者製品の製造・輸入、加工、販売、使用が禁止される)

作業者ばく露基準値の改訂
ばく露濃度基準値の改訂が提案されている。

  • 8時間時間加重平均値 :2ppm(8mg/m3)(活動時は1ppm)
  • 15分間時間加重平均値:16ppm

参考資料

米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition 65の発がん物質リストに2物質を追加する予定である。

対象物質
  • 1,1,1-トリクロロエタン(CAS RN 71-55-6)
  • ロイコマラカイトグリーン(CAS RN 129-73-7)

これらの物質について、国際がん研究機関(IARC)は、動物試験において発がん性が認められことからグループ2A(probably carcinogenic to humans)あるいはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)であると結論している。

IARCの評価
  • 1,1,1-トリクロロエタン

ヒトの疫学調査において、多発性骨髄腫との関連性が示唆された。動物実験では、吸入ばく露試験において、マウスの雄で脾臓の悪性リンパ腫、肺の細気管支・肺胞腺腫、細気管支・肺胞腺がんが発生し、雌でも肺の細気管支・肺胞腺腫、腺がんが増加した。ラットの雄では腹膜中皮腫が増加した。経口投与試験では、ラットの雄で諸臓器の白血病が増加した。
ヒトに対する発がん性を示す証拠は限定的であるが、動物実験では発がん性を示す十分な証拠があることから、IARCはグループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。


  • ロイコマラカイトグリーン

動物実験において、マウスでは肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がんが認められた。ラットでは甲状腺の濾胞細胞腺腫、濾胞細胞腺がん、乳腺の腺腫、腺がんが認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

カナダ

カナダの環境・保健省は、クロロクレゾールについて、ヒト健康影響が懸念されることから、カナダ環境保護法(CEPA)の有害物質リスト(スケジュール1)に収載する予定である。

対象物質
  • 4-クロロ-3-メチルフェノール(クロロクレゾール)
  • CAS RN 59-50-7
  • ボディモイスチャライザークリームやローションなどの化粧品の成分として、また非医療用の自然健康食品、皮膚の炎症を治療するための一時的な市販薬成分としても使用されている。害虫駆除製品の有効成分として登録されている。さらに、食品加工施設において付随的な添加物(潤滑剤)として使用される場合がある。
有害性について
  • 環境中において、大気、水、土壌中に残留する可能性は低く、生物濃縮性の可能性も低いと考えられる。また、環境中への排泄は少なく、魚への影響は低いと考えられることから、生態毒性の懸念は低いと考えられる。
  • ヒト健康影響について、動物実験を用いた反復投与毒性試験において、皮膚刺激性、肝臓への影響(胆管増生等)、副腎への影響(臓器重量低下)が認められている。クロロクレゾールはボディローションやかゆみ止めクロームに最大2%の濃度で含まれていることから、ばく露リスクを評価すると、特に、幼児におけるばく露が懸念された。(幼児におけるmargin of exposure、MOEは53~66)

欧州

欧州委員会の消費者安全科学委員会(Scientific Committee for Consumer Safety: SCCS)は、化粧品に使用される3物質について、安全性に関する最終意見書および意見書案を公表した。

メチルパラベン(CAS RN 99-76-3)
  • 用途・法規制等 : メチルパラベンおよびその塩は、化粧品、食品、医薬品の防腐剤として、単独あるいは他のパラベンや抗菌剤と組み合わせ使用されている。化粧品規則EC 1223/2009の付属書Vのエントリー12において、最大0.4%(酸として)に規制されており、「4-ヒドロキシ安息香酸、その塩およびエステル」としてメチルパラベン、エチルパラベン等が規制されている。その他に、メチルパラベンは食品の保存料や抗下痢薬、胸やけの薬、放射線造影剤などの特定の自然健康製品にも使用されている。
  • 意見書概要 : メチルパラベンの有する潜在的な内分泌攪乱作用を考慮して、SCCSは化粧品の防腐剤として単独で使用される場合、最大濃度が0.4%(酸として)、エステルの混合物として使用される場合、最大0.8%(酸として)まで安全であると結論している。
ベンゾフェノン-4(CAS RN 4065-45-6)
  • 用途・法規制等 : ベンゾフェノン-4はUVフィルターとして、皮膚や毛髪の日焼け防止に長年利用されている。化粧品に配合することにより、製品を太陽光から保護する役割も果たしている。また、ベンゾフェノン-4を含む日焼け防止製品は、クロルプロマジン、クロルテトラサイクリン、3,3’,4’,5-テトラクロロサリチルアニリドなどによる光毒性から皮膚を保護する作用も有している。化粧品用途としては、皮膚に塗布されるほか、アイメイク製品など偶発的に目に触れることも考慮して、0.2%までの濃度まで安全であるとされており、エアゾルヘアスプレーでは最大濃度が0.015%で、ポンプ式ヘアスプレーでは最大濃度が0.1%から0.35%の含有量で使用されている。
  • 意見書概要 : ベンゾフェノン-4の有する潜在的な内分泌攪乱作用を考慮して、SCCSは化粧品におけるUVフィルターとして、日焼け止め、顔と手のクリーム、口紅、日焼け止めプロペラスプレー、およびポンプスプレーにおいて、最大5%の濃度で単独または組み合わせて使用される場合に、安全であると結論している。
アルミニウム
  • 用途・規制等 : 主な用途として制汗剤、口紅やその他の化粧品、フェイスクリームに含まれている。また、赤ちゃん用のボディパウダーにも使用されている。
  • 意見書概要 : 化粧品中のアルミニウムのばく露について、SCCSは製品タイプごとに安全な濃度限界を推奨している。
    ・非スプレー製品カテゴリーでは、ボディーローション3.81%、アイシャドウ43.31%、ハンドクリーム0.86%、歯磨き3.18%など、安全な濃度が提示されている。
    ・スプレー製品では、ボディスプレー1.18%、ヘアスプレー0.15%など、安全な濃度が提示されている。ただし、直径が10μm未満の粒子の割合が総エアロゾル粒子の20%を超えないことが条件となっている。
また、タルク中にアルミニウムが含まれるが、2%以下であれば安全性に問題ないと結論している。

参考資料

欧州委員会の消費者安全科学委員会(Scientific Committee for Consumer Safety: SCCS)は、化粧品に使用される3物質について、安全性に関する最終意見書を公表した。

ベンジルサリチル酸
  • 用途・規制等 : 化粧品の香料として広く使用されており、甘い香りが特徴である。欧州の化粧品規則(付属書III、エントリー75)では、化粧品やパーソナルケア製品への使用を制限していないが、「leave-on製品では濃度が0.001%を超える場合、rinse-off製品では0.01%を超える場合は成分リストに表示しなければならない」と規定されている。また、UV吸収剤としても使用されることがある。
  • 意見書概要 : ベンジルサリチル酸の潜在的な内分泌かく乱作用を考慮する必要があるが、これまでにヒトにおいて内分泌影響をもたらす証拠はないことから、0.004%(口腔ケア製品)~1.3%(rinse-off製品)、4%(水・アルコールベースの香料)など、用途によって濃度は異なるが既存の最大濃度での使用について安全であると結論している。
ブチルパラベン
  • 用途・規制等 : ブチルパラベンは防腐剤として化粧品に用いられており、化粧品規則(付属書V)では、単独で最大0.14%まで、または同じ製品でブチルパラベン、プロピルパラベン、およびそれらの塩の合計が最大0.14%に規制されている。また、他のパラベン成分(メチルパラベン、エチルパラベン、およびそれらの塩など)との組み合わせによる全パラベンの総濃度は、0.8%以下に制限されている。ただし、3歳未満の子供のおむつ用途についてleave-on製品での使用は禁止されている。
  • 意見書概要 : SCCSは、化粧品の防腐剤用途について、0.14%まで安全であると結論している。
亜鉛化合物
  • 用途・規制等 : 口腔衛生製品において、口臭を軽減、歯垢の形成抑制に利用され、さらに、抗菌作用を有することから口腔内のプラークコントロール、歯周病や虫歯などの口腔問題の低減にも有効である。
  • 意見書概要 : SCCSは、水溶性の亜鉛塩が、歯磨き粉では1%(亜鉛として)、うがい薬では0.1%(亜鉛として)の濃度で用いられていることから、以下のように結論している。
    歯磨き粉:成人や子供に対して、水溶性の亜鉛塩が歯磨き粉中で1%(亜鉛として)まで安全である。ただし、1歳未満の子供に関しては、摂取量が安全基準を超える可能性があるため、この年齢層については、歯磨き粉中の水溶性亜鉛塩の安全濃度について0.72%(亜鉛として)を推奨する。
    うがい薬:うがい薬中の亜鉛濃度0.1%(亜鉛として)について、6歳以上のすべての年齢層に安全である。ただし、1歳未満の子供については摂取量の懸念から、安全な濃度として0.72%(亜鉛として)を推奨する。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、6物質についてREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加する予定である。

2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール
  • CAS RN 732-26-3
  • 水溶解性が低く、高いlog Kocを示すことから長期間の残留が懸念され、生物濃縮性についてもBOCは> 5000L/kgと推定される。また、胎児への影響や反復ばく露による肝臓への影響も懸念される。(生殖毒性、PBT、vPvB)
2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール
  • CAS RN 3147-75-9
  • 用途:プラスチック製品、プラスチックのリサイクル、発泡体や樹脂などのポリマー、接着剤等
  • 加水分解しないことから長期間の残留が懸念され、log Kowが> 4.5と推定されることから高い生物濃縮性(BOC > 5000L/kg)が懸念される。(vPvB)
2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(モルフォリン-4-イル)フェニル]ブタン-1-オン
  • CAS RN 119344-86-4
  • 用途:塗料、インク、UVインクの光開始剤、トナー等
  • 胎児への影響が懸念される。(生殖毒性)
ブメトリゾール
  • CAS RN 3896-11-5
  • 用途:プラスチック製品、リサイクル、発泡剤や樹脂のポリマー、接着剤、 シーラント、コーティング、光化学薬品、潤滑剤やグリース等
  • 加水分解しないことから長期間の残留が懸念され、log Kowが> 4.5と推定されることから高い生物濃縮性(BOC > 5000L/kg)が懸念される。(vPvB)
ジブチルフタラート
  • CAS RN 84-74-2
  • 用途:可塑剤として、ビニール製の床材、ケーブル、コーティング布地、接着剤、インク等
  • 哺乳動物に対する内分泌かく乱作用が認められたことからSVHCリストに掲載されている(2017年)。さらに、ジブチルフタラートは魚類に対してもエストロゲンや抗アンドロゲン作用による生殖腺の組織変化や繁殖能の低下が認められ、環境生物に対する内分泌かく乱作用が懸念される。(環境生物に対する内分泌かく乱作用)
2-フェニルプロペンとフェノールのオリゴマー化およびアルキル化反応生成物
  • CAS RN 記載なし
  • 用途:接着剤およびシーラント、コーティング製品、充填剤、パテ、石膏、モデリング粘土、インク、トナー等
  • 生物分解性は28日間で4%と乏しく、長期間の残留性が懸念される。log Kowが> 4.5と推定されることから高い生物濃縮性(BOC > 5000L/kg)が懸念される。(vPvBに分類される)

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、CLP規制の有害性クラスに関する適用日や関連するガイダンスに関する情報を公開した。

新たな有害性クラス
  • ヒト健康や環境に対する内分泌かく乱作用
  • 難分解性、生物蓄積性および毒性 (PBT) および⾮常に難分解性、生物蓄積性が高い (vPvB) 物質の特定
  • 難分解性、移動性、毒性 (PMT) および⾮常に難分解性、移動性が高い (vPvM) 物質の特定
有害性の分類区分とコード等
  • 内分泌かく乱物質(ヒト)
    区分1:EUH380、May cause endocrine disruption in humans
    区分2:EUH381、Suspected of causing endocrine disruption in humans
  • 内分泌かく乱物質(環境)
    区分1:EUH430、May cause endocrine disruption in the environment
    区分2:EUH431、Suspected of causing endocrine disruption in the environment
  • PBT・vPvB
    PBT :EUH440、Accumulates in the environment and living organisms including in humans
    vPvB:EUH441、Strongly accumulates in the environment and living organisms including in humans
  • PMT・vPvM
    PMT :EUH450、Can cause long-lasting and diffuse contamination of water resources
    vPvM:EUH451、Can cause very long-lasting and diffuse contamination of water resources

各有害性クラスの詳細については、以下のサイトもご参照ください。
https://www.stis.co.jp/ghs-sds/2022/

移行期間

新しい有害性クラスは、2023年4月20日から発効するが、以下のように移行期間が設けされている。これ以降は新たな有害性クラスが義務化される

  • 単一物質
    新規物質:~2025年4月30日
    既上市品:~2026年10月30日
  • 混合物
    新規物質:~2026年4月30日
    既上市品:~2028年4月30日

また、2024年にガイダンスの発行が予定されている。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、2物質についてREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加する予定である。

ビス(4-クロロフェニル) スルフォン
  • CAS RN 80-07-9
  • 用途:ポリマー、ゴム等の製造に、原料や添加剤として使用されている。
  • 非常に高い難分解性・生物蓄積性(vPvB)が懸念される。大気中での半減期は54.7日以上、水・底質中での分解について、底質中での半減期は842~2748日であった。また、生物蓄積性については、水生生物では低~中程度であるが、ラットでは脂肪組織からの排泄が非常に遅い(半減期12日)ことが示されている。
ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
  • CAS RN 75980-60-8
  • 用途:フォトケミカル、インクやトナー、コーティング製品、接着剤やシーラント、ポリマーやフィラー、パテ、石膏、粘土に使用されている。また、布地、織物、アパレル (衣類、マットレス、カーテン、カーペット、織物のおもちゃなど)、紙 (ティッシュ、女性用衛生用品、おむつ、本、雑誌、壁紙など) 、プラスチック(食品の包装、おもちゃ、携帯電話など)の素材にも含まれている。
  • 生殖毒性が懸念される。(区分1Bに分類される)

欧州の消費者安全科学委員会(SCCS)は、化粧品に含まれるαアルブチン、βアルブチンの安全性を評価し、意見書を公表した。

対象物質
  • αアルブチン(CAS RN 84380-01-8)
  • βアルブチン(CAS RN 497-76-7)

いずれも、抗酸化剤、皮膚の漂白、皮膚のコンディショナーとして、化粧品に含まれている。

安全性評価

αおよびβアルブチンは、皮膚のマイクロバイオーム(常在細菌等)により代謝され、ヒドロキノンが生成し、ベンゾキノンが発生する可能性がある。これらは反応性が非常に高く、種々の高分子に結合することが懸念される。
SCCSは、ヒドロキノンの生成に着目して、安全性を評価している。

  • αアルブチン

αアルブチンは、フェイスクリーム中に2%、ボディーローション中に0.5%の濃度で含有されている。
SCCSは、化粧品の使用量をフェイスクリームで1.54g/日、ボディーローションで7.84g/日、体重は60kgとし、さらに各種試験結果に基づいて皮膚からの吸収率を0.53%として、αアルブチンの体内ばく露量を算出した。その結果、αアルブチンのばく露量はフェイスクリームでは2.72μg/kg/日、ボディーローションでは3.45μg/kg/日と推定され、合計で6.17μg/kg/日と推定された。全量がヒドロキノンに変換されると仮定すると(ワーストシナリオとして)、モル比から、ヒドロキノンのばく露長は2.50μg/kg/日と推定された。

  • βアルブチン

βアルブチンはフェイスクリーム中に7%の濃度で含有されていることから、上記のαアルブチンと同様に算出すると、推定ばく露量は6.80μg/kg/日であった。


SCCSは、αアルブチンおよびβアルブチンのばく露量は、皮膚で生成されるヒドロキノンのばく露量を考慮しても、いずれも十分な安全率が確保されていると判断しており、αアルブチンについては、フェールクリームで2%、ボディーローションで0.5%、βアルブチンについてはフェイスクリームで7%まで安全であると評価している。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、9物質をREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加した。

2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン-2-イル)モルホリンと2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(ヘプタフルオロプロピル)モルホリンの反応生成物
  • 水中半減期が60日、土壌中半減期が180日、BCFが5000をいずれも上回ることから、vPvB作用が懸念される。
ペルフルオロヘプタン酸及びその塩
  • ペルフルオロヘプタン酸アンモニウム CAS RN 6130-43-4、ペルフルオロヘプタン酸カリウム CAS RN 21049-36-5、ペルフルオロヘプタン酸 CAS RN 375-85-9、ペルフルオロヘプタン酸ナトリウム CAS RN 20109-59-5
  • 生殖毒性(区分1Bに分類される)、PBT、vPvB(PFOA等のペルフルオロアルキル化合物と同様に環境中に長期間残留する)の各作用が懸念される。
メラミン
  • CAS RN 108-78-1
  • 環境中に長期間残留し、魚類等の環境生物への影響が懸念される。尿路系の毒性、発がん性、生殖毒性からヒト健康影響が懸念される。
イソブチル4-ヒドロキシベンゾアート
  • CAS RN 4247-02-3
  • エストロゲン受容体との結合や子宮増殖試験等の結果からエストロゲン様の作用が示唆され、内分泌かく乱作用が懸念される。
ビス(2-エチルヘキシル)テトラブロモフタル酸
  • CAS RN 26040-51-7
  • 環境中に長期間残留し、BCFが5000を上回ることから、vPvB作用が懸念される。
ホウ酸バリウム
  • CAS RN 13701-59-2
  • 生殖毒性が懸念される。(区分1Bに分類される)
4,4′-スルホニルジフェノール
  • CAS RN 80-09-1
  • エストロゲン様の作用やステロイド合成への影響から内分泌かく乱作用が懸念される。また、これらの作用を介した性周期、繁殖性、仔動物への影響が認められ、ヒトや環境生物に対する内分泌かく乱作用や生殖毒性が懸念される。
2,2′,6,6′-テトラブロモ-4,4′-イソプロピリデンジフェノール
  • CAS RN 79-94-7
  • 発がん性が懸念される。(区分1Bに分類される)
1,1′-[エタン-1,2-ジイルビスオキシ]ビス[2,4,6-トリブロモベンゼン]
  • CAS RN 37853-59-1
  • 土壌中の半減期が180日を上回り、BCFも5000を上回ることから、vPvB作用が懸念される。

参考資料

日本

厚生労働省は、「労働安全衛生規則第577条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び厚生労働大臣が定める濃度の基準」(濃度基準告示)と「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」(技術上の指針)を公表した。

以下に抜粋する。

濃度基準

労働安全衛生規則(安衛則)第577条の2第2項の厚生労働大臣が定める物として、これまでに67物質について濃度基準値が定められている。

濃度基準値のうち、8時間のばく露における物質の平均の濃度(8時間時間加重平均値)は、「8時間濃度基準値」を超えてはならず、また、濃度が最も高くなると思われる15分間のばく露における物質の平均の濃度(15分間時間加重平均値)は、「短時間濃度基準値」を超えてはならない。

次のように事業者の努力義務が定められている。

  • 15分間時間加重平均値が8時間濃度基準値を超える場合 ⇒ 3倍を超えないようにすること
  • 短時間濃度基準値が天井値(濃度が最も高くなると思われる瞬間の濃度が超えてはならない値)として定められている場合 ⇒ いかなる短時間のばく露におけるものであるかを問わず、短時間濃度基準値を超えないようにすること
  • 有害性の種類及び当該有害性が影響を及ぼす臓器が同一であるものを2種類以上含有する混合物を取り扱う場合 ⇒ 換算値が1を超えないようにすること

適用日:令和6年4月1日

技術上の指針

全てのリスクアセスメント対象物について、危険性又は有害性を特定し、労働者が当該物にばく露される程度を把握した上で、リスクを見積もること。

濃度基準値が設定されている物質について、リスクの見積りの過程において、労働者が当該物質にばく露される程度が濃度基準値を超えるおそれがある場合は、ばく露される程度が濃度基準値以下であることを確認するための測定を実施すること。

上記の評価結果に基づき、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を最小限度とすることを含め、必要なリスク低減措置を実施すること。その際、濃度基準値が設定されている物質については、労働者が当該物質にばく露される程度を濃度基準値以下としなければならない。

濃度基準値が設定されていない物質について、リスクの見積りの結果、一定以上のリスクがある場合等、労働者の労働者のばく露ばく露を正確に評価する必要がある場合には、当該物質の濃度の測定を実施する。

発がん性が明確な物質については、長期的な健康影響が発生しない安全な閾値である濃度基準値を設定することは困難であるため、事業者は、これら物質にばく露される程度を最小限度としなければならない。

適用日:令和6年4月1日

参考資料

厚生労働省は、化学物質による労働災害を防止するため、労働安全衛生規則等の一部を改正した。
改正の主なポイントを示す。

労働安全衛生規則関係
  • 化学物質管理者を選任し、化学物質に関する管理体制の強化
  • 化学物質のSDS等による化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化
  • 適切な保護具を使用させること等の化学物質の自律的な管理体制の整備
  • 化学物質の管理状況に関する労使等のモニタリングの強化
  • 教育の対象業種の拡大/教育の拡充を全業種に拡大
有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、粉じん障害防止規則関係
  • 化学物質管理の水準が一定以上の事業場に対する個別規制の適用除外
  • 作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する作業環境の改善措置の強化
  • 特殊健康診断の実施頻度の緩和

今回の改正は、職場の化学物質管理を広範な物質に拡大し、従来の「個別規制型」から「自律的な管理」への移行を促進するものである。事業場規模にかかわらず「化学物質管理者」を選任することが義務付けられ、化学物質管理者は、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理するものと位置づけられた。表示及び通知、リスクアセスメントの実施、記録の保存、ばく露低減対策、労働災害発生時の対応、労働者の教育等の職務がある。


厚生労働省は、化学物質管理者に関するテキスト(暫定版)を公表し、化学物質管理者の育成の一助としている。

参考資料

今回の改正の重要な柱である「化学物質管理者」の職務について概略を示します。


化学物質管理者は、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理するものと位置づけられており、表示及び通知、リスクアセスメントの実施、記録の保存、ばく露低減対策、労働災害発生時の対応、労働者の教育等の職務が義務付けられている。

専門的講習

化学物質管理者は専門的講習を受けていなければならない。厚労省のテキスト(暫定版)では、以下のような専門的講習が示されている。

  • 化学物質の危険性・有害性、健康障害の病理・症状、危険性・有害性等の表示と通知
  • 化学物質の危険性・有害性等の調査、方法、その結果の記録
  • ばく露の濃度の基準、濃度の測定方法、危険・健康障害を防止するための措置、当該措置等の記録、がん原性物質等の製造等業務従事者の記録、保護具の種類、使用方法、管理、労働者に対する化学物質管理に必要な教育
  • 化学物質を原因とする災害の発生時の対応、災害発生時の措置
  • 関係法令:労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則
  • 上記に関する実習
化学物質管理者の職務

職務は、「自社製品の譲渡・提供先への危険有害性の情報伝達に関する職務」と「自社の労働者の安全衛生確保に関する職務」に大別される。

  • 自社製品の譲渡・提供先への危険有害性の情報伝達に関する職務
  • ラベル表示及び安全データシート(SDS)交付に関することとして、化学物質管理者はSDS作成等の作業を管理し、内容の適切性等を確認する必要がある。


  • 自社の労働者の安全衛生確保に関する職務
  • ・リスクアセスメントの実施:リスクアセスメントの推進並びに実施状況を管理する。
  • ・リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の実施:ばく露防止措置(代替物の使用、装置等の密閉化、局所排気装置又は全体換気装置の設置、作業方法の改善、保護具の使用など)の選択及び実施について管理する。
  • ・労働災害が発生した場合の対応:労働災害が発生した場合の対応、労働災害が発生した場合を想定した応急措置等の訓練の内容及び計画を定めることを管理する
  • ・リスクアセスメントの結果等の記録の作成及び保存並びに労働者への周知:記録し保存する。また、リスクアセスメント結果の労働者への周知を管理する。
  • ・リスクアセスメントの結果に基づくばく露防止措置が適切に施されていることの確認、労働者のばく露状況、労働者の作業の記録、ばく露防止措置に関する労働者の意見聴取に関する記録・保存並びに労働者へ周知する。
  • ・労働者への周知、教育:労働者に対する必要な教育(雇入れ時教育を含む)の実施における計画の策定や教育効果の確認等を管理する。
  • また、テキストでは、GHS分類に基づく表示や SDSの作成、リスクアセスメントに関する技術的な部分、リスクアセスメントに基づく対策等において、外部事業者、専門家及び機関等を活用して、専門的な知識及び経験が乏しい化学物質管理者においては、外部の事業者等に職務を委託することを推奨している。

    参考資料

    化学物質の自律的な管理において、取扱い物質の危険性・有害性に関する情報の伝達は最も重要なポイントである。化学物質管理者は、化学物質の危険性・有害性に関してよく理解しなければならないと同時に、これを正確に伝える必要がある。


    情報伝達の手段としてラベルやSDSを推奨している。
    現在、化学物質の危険性・有害性に関する情報伝達は国連文書である「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」によって国際的に調和されており、GHSに従った情報伝達が浸透している。


    国連GHS改訂6版では、物理化学的危険性17項目、健康有害性10項目、環境有害性2項目について評価されている。

    物理化学的危険性
    • 爆発物:それ自体の化学反応により、周囲環境に損害を及ぼすような温度および圧力ならびに速度でガスを発生する能力のある固体または液体。
    • 可燃性ガス:空気との混合気が燃焼範囲を有するガス。空気中で自然発火しやすいような可燃性/引火性ガス。空気や酸素が無い状態でも爆発的に反応しうる可燃性/引火性ガス。
    • エアゾール:圧縮ガス、液化ガスまたは溶解ガスを内蔵する金属製、ガラス製またはプラスチック製の再充填不能な容器に、内容物をガス中に浮遊する固体もしくは液体の粒子として、または液体中またはガス中に泡状、ペースト状もしくは粉状として噴霧する噴射装置を取り付けたもの。
    • 酸化性ガス:空気以上に燃焼を引き起こす、または燃焼を助けるガス。
    • 高圧ガス:圧力の下で容器に充填されているガスまたは液化または深冷液化されているガス。
    • 引火性液体:引火点が93℃以下の液体。
    • 可燃性固体:易燃性を有する、または摩擦により発火あるいは発火を助長する恐れのある固体。
    • 自己反応性物質および混合物:熱的に不安定で、酸素(空気)がなくとも強い発熱分解を起こし易い液体または固体あるいはその混合物。
    • 自然発火性液体:空気と接触すると5分以内に発火しやすい液体。
    • 自然発火性固体:空気と接触すると5分以内に発火しやすい固体。
    • 自己発熱性物質および混合物:自然発火性液体または自然発火性固体以外の固体物質または混合物で、空気との接触によりエネルギー供給がなくとも、自己発熱しやすいもの。
    • 水反応可燃性物質および混合物:水との相互作用により、自然発火性となるか、または可燃性ガスを危険となる量発生する固体または液体あるいはその混合物。
    • 酸化性液体:他の物質を燃焼させ、または助長するおそれのある液体。
    • 酸化性固体:他の物質を燃焼させ、または助長するおそれのある固体。
    • 有機過酸化物:2価の-O-O-構造を有し、1あるいは2個の水素原子が有機ラジカルによって置換されている過酸化水素の誘導体と考えられる、液体または固体有機物質。
    • 金属腐食性物質:化学反応によって金属を著しく損傷し、または破壊する物質または混合物。
    • 鈍性化爆発物:大量爆発や非常に急速な燃焼をしないように、爆発性を抑制するために鈍性化したもの。
    健康有害性
    • 急性毒性:単回または短時間の経口、経皮または吸入ばく露後に生じる健康への重篤な有害性(致死作用)。
    • 皮膚腐食性/刺激性:皮膚に対する不可逆的な損傷(腐食性)。ばく露後に起こる、表皮を貫通して真皮に至る明らかに認められる壊死。ばく露後に起こる、皮膚に対する可逆的な損傷。
    • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:ばく露後に起こる、眼の組織損傷を生じさせること。視力の重篤な機能低下で、完全には治癒しないもの。ばく露後に起こる、眼に変化を生じさせることで、完全に治癒するもの。
    • 呼吸器感作性または皮膚感作性:吸入後に起こる、気道の過敏症。皮膚接触した後に起こる、アレルギー性反応。
    • 生殖細胞変異原性:ばく露後に起こる、生殖細胞における構造的および数的な染色体の異常を含む、遺伝性の遺伝子変異。
    • 発がん性:ばく露後に起こる、がんの誘発またはその発生率の増加。
    • 生殖毒性:ばく露後に起こる、雌雄の成体の性機能および生殖能力に対する悪影響、子世代における発生毒性。授乳に対する、または授乳を介した影響を含む。
    • 特定標的臓器毒性(単回ばく露):単回のばく露後に起こる、特異的な非致死性の標的臓器への影響。
    • 特定標的臓器毒性(反復ばく露):反復ばく露後に起こる、特異的な標的臓器への影響。
    • 誤えん有害性:誤えん後に起こる、化学肺炎、肺損傷あるいは死のような重篤な急性影響。
    環境有害性
    • 水生環境有害性:短期の水生ばく露の間に、その急性毒性によって生物に引き起こされる有害性。水生環境における長期間のばく露を受けた後に、その慢性毒性によって引き起こされる有害性。
    • オゾン層への有害性:ハロカーボンによって見込まれる成層圏オゾンの破壊。

    • ただし、GHS分類に従った危険・有害性の判定について、いくつかの留意点が指摘されている。

    • 政府によるGHS分類(厚生労働省、経済産業省、環境省の3省がGHS分類を実施し、その分類結果をNITEで公表)の他、欧州ECHA等が分類結果を公表しているが、分類結果の採否は事業者に委ねられる。
    • 日本においても、欧州においても、同一の化学物質のGHS分類結果が見直しされ、変更されることがある。危険性・有害性に関する新しい知見が出てきたり、GHSの判定基準が変わったりする。GHS分類に更新がないかチェックが必要である。
    • 他の国内法令とGHSの違いについて、日本において危険性に関する主な国内法令として、消防法、高圧ガス保安法、火薬類取締法があげられる。これら三法はGHSを導入していない。従って、GHSの物理化学的危険性と危険性に関する国内法令を比較すると、用語は同じであっても、危険性の定義や試験方法は同一ではない。毒劇法においても、GHS準拠のSDSで、急性毒性の区分1~3という分類等が記載されていたとしても毒劇物に指定されているとは限らない。

    参考資料

    第5章では、化学物質のばく露量とばく露量の把握について記載されている。

    用量反応性と閾値

    化学物質の有害性とは、「生体にとって好ましくない変化を生じさせる能力」であるが、これには、用量反応性がある。「すべての物質は毒性である。毒性ない物質は存在しない。それが毒になるか薬になるかは用いる量に依存する。(パルケルスス)
    すなわち、化学物質の有害性には閾値があり、閾値の範囲内では有害性が発現しないと考えられる。

    なお、遺伝毒性発がん物質については、閾値がない物質との考え方が現在のところ主流であり、ばく露量がゼロにならない限り、発がんの可能性もゼロにはならないと仮定される。しかし、通常の生活で遭遇する稀なリスクと同程度の非常に低い確率となるようなばく露量は実質的な閾値と解釈され、数学的なモデル(ユニットリスク、スロープファクター)により、実質的な閾値が推定されている。

    作業環境測定・ばく露測定

    ばく露量測定には、「作業環境測定」「個人ばく露測定」「生物学的モニタリング」があり、それぞれの特色に応じて使い分けられている。

    • 作業環境測定
    • 化学物質の作業環境中濃度をできるだけ低くすることが安全対策の大きな柱の一つである。作業環境測定とは作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行う測定するもので、107物質について作業環境測定が義務付けられている。(労働安全衛生法施行令第21条、以下に抜粋)


    • 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの
    • 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの
    • 著しい騒音を発する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの
    • 坑内の作業場で、厚生労働省令で定めるもの
    • 中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの
    • 別表第二に掲げる放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの
    • 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号34の2に掲げる物及び同号37に掲げる物で同号34の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場若しくは石綿分析用試料等を製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場
    • 別表第四第一号から第八号まで、第十号又は第十六号に掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場
    • 別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場
    • 別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場
    個人ばく露測定

    化学物質は吸入、経口、経皮の各ばく露経路を通して体内に取り込まれる。労働環境においては多くの場合、化学物質は吸入によりばく露量されるため、個人ばく露測定に際しては、呼吸域の空気(気体)を捕集し、対象物質の分析を行い、濃度基準値等と比較して評価を行う。

    濃度基準値は、健康障害を防止するための最低基準であることから、全ての労働者のばく露が、濃度基準値以下である必要がある。短期的、長期的なばく露を考慮した基準値が設定されている。

    • 8時間濃度基準値 : 長期的な健康障害を防止するために、1日(8時間)の時間加重平均値が超えてはならない基準。
    • 短時間濃度基準値: 急性中毒等の健康障害を防止するために、作業中のいかなる15分間の時間平均値も超えてはならない基準。短時間濃度基準値が設定されていない物質についても、作業期間のいかなる15分間の時間加重平均値、8時間濃度基準値の3倍を超えないように努めなければならない。
    • 短時間濃度基準値(天井値): 作業中のばく露のいかなる部分(いかなる短時間のピーク)においても超えないように努めなければならない基準。
    生物学的モニタリング

    血液や尿などの生体試料を用いて、化学物質へのばく露量や生体影響の程度を調べる目的で行われる測定である。これにより個人のばく露程度をより正確に知ることができる。日本産業衛生学会では生物学的許容値として、23種類(許容濃度等の勧告)の物質について公表されている。

    特化則又は有機則、鉛則に基づき生体試料の測定が義務付けられている化学物質があり、特別規則(特化則、有機則等)の対象物質を取り扱う労働者に対する特殊健康診断という形で、健康管理の一部として確立している。これらは労働安全衛生関連法令の中で規定されている。

    参考資料

    第6章では、化学物質等のリスクアセスメントとして、リスクの見積り、評価について記載されている。。

    リスクアセスメントの流れ(概要)
    • 初期調査:事業場で使用する全てのリスクアセスメント対象物について、危険性又は有害性を特定する。
    • ばく露量の推定:ばく露される程度を数理モデルの活用を含めた適切な方法により推定し、ばく露量を把握する。
    • リスクの見積り:ばく露される程度が濃度基準値を超えるおそれのある作業か否か把握する。
    • 測定の実施:作業環境濃度の確認測定を実施する。
    • リスク低減措置:測定結果に基づき、当該作業に従事する全ての労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とすることを含め、必要なリスク低減措置を実施する。(工学的対策、管理的対策、有効な保護具の使用など)
    初期調査

    初期調査では、製造あるいは取扱っている化学物質を全てリストアップし、それらの危険性・有害性について調査する。

    • 化学物質のリストアップ:リスクアセスメントが義務化・努力義務対象物質(労働安全衛生法第57条第1項の政令で定める物質等に加えて、ガイダンスでは、上述のように「製造あるいは取扱っている化学物質を全てリストアップ」することが記載されている。
    • 危険有害性情報の収集:自社で新規に製造した物質であれば法令等に基づいて自ら採取したデータから、また外部から取得した物質であれば交付されたSDSの記載から危険性・有害性を特定する。基本的に危険性・有害性に関する情報はGHSの判定基準にしたがって分類された結果を使用する。
    • 取扱い作業に関する情報収集:対象となる業務や作業工程の作業標準、作業手順書、機械設備等に関する情報、さらに当該化学物質に関する災害事例、災害統計なども必要である。過去の労働災害の事例、ヒヤリハットのあった作業、労働者が日常不安を感じている作業、過去に事故のあった設備等を使用する作業、操作が複雑な化学物質に係わる機械設備等の操作などの情報を収集する。
    • 優先順位:リスクアセスメントは事業場内のすべての物質を考慮し優先順位をつけて実行することが原則であるが、「義務対象の物質および重大なリスクが懸念される物質」については、直ちに実施すべきである。
    ばく露量の推定・リスクの見積り

    ガイダンスでは、リスクアセスメントを実施するための手法・ツールとして、「簡易的な手法・ツール」「詳細な解析手法」による段階的な評価が推奨されている。

    化学物質の危険性に対するリスクアセスメント

    簡易リスクアセスメント:「危険性スクリーニング支援ツール」「CREATE-SIMPLE」を用いる。
    詳細なリスクアセスメント:安衛研手法、労働省方式、JISHA方式、HAZOP35などの詳細な解析手法を用いる。

    • 安衛研手法:中央労働災害防止協会、化学物質による爆発・火災を防ぐ、第2編 第4章、pp.108-152(2018)
    • 労働省方式;高圧ガス保安協会、リスクアセスメント・ガイドライン(Ver.2)(2016)
    • JISHA方式:労働安全衛生総合研究所技術資料、化学物質の危険性に対するリスクアセスメント等実施のための参考資料-開放系作業における火災・爆発を防止するために―、JNIOSH-TD-No.7(2021)
    • HAZOP:化学プラント等の化学反応のプロセス等による災害のシナリオを仮定して、その事象の発生可能性と重篤度を考慮する方法

    化学物質の健康有害性に対するリスクアセスメント

    • 初期調査:数理モデル(CREATE-SIMPLE等)、簡易測定(検知管、リアルタイムモニター)によりばく露量を推定し、濃度基準値等と比較することによりリスクを評価する。
    • 詳細調査:確定測定により作業環境や個人ばく露量を測定し、精緻化を図る。

    リスクアセスメントに用いるばく露限界値については、「濃度基準値」「学会等が勧告しているばく露限界値」「管理目標濃度」の順に優先順位が設けられている。

    • 濃度基準値:行政が定める濃度基準値が設定済の物質については、濃度基準値を採用する。
    • 学会等が勧告しているばく露限界値:ACGIH TLV-TWA、日本産業衛生学会 許容濃度、ドイツDFG MAKなどのばく露限界値のうち、信頼性が高く、最も低い(有害性の高い)値を採用する。
    • 管理目標濃度:GHS分類に基づいた健康有害性の情報からばく露管理を行う目安としての管理目標濃度を設定する。

    また、皮膚腐食性・刺激性・感作性・皮膚吸収による健康影響のおそれがある場合には保護具の着用が義務付けられる(安衛則第594条の2)。皮膚等障害化学物質等は、「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1に分類されている物質及び別途告示等示される物質が対象となる。

    参考資料

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