GHS・SDS・法規制ニュース(2019年)

GHS分類、SDS作成、化学品管理に関連した各国の法規制情報をご提供いたします。

国連

2019年9月、クロアチアの批准により発効に必要な条件に達したため、条約で規定されている90日間の後、バーゼル条約の廃棄物輸出禁止条項が2019年12月5日から発効される。


禁止条項は、1995年の第3回締約国会議のIII / 1で採択され、第4条に付属書VIIが追加された。この条項は、附属書VIIに掲載されている各締約国(EU加盟国、OECD加盟国およびリヒテンシュタイン等)から附属書VIIに掲載されていない国への、有害廃棄物の国境を越えた移動を禁止するものである。


バーゼル条約は、有害廃棄物の国境を越える移動とその処分を規制する廃棄物に関する包括的な国際条約であり、有害廃棄物によるヒト健康・環境リスクを回避する基盤となっている。禁止条項の発効により、有害廃棄物について、廃棄物の回収やリサイクルなどの健全で責任ある管理が国際的に求められる。

参考資料

バーゼル条約締約国会議は、リサイクルに適さない汚れた廃プラスチックを同条約の規制対象とする改正案を採択した。改正された条約は2021年から施行される予定で、廃プラスチックを輸出する際に相手国の同意が必要となる。
また、締約国会議では、廃プラスチックに関するパートナーシップの設立が決定した。以下に抜粋する。

政策・規制の枠組み
プラスチック廃棄物の発生、処分、および国境を越えた移動に関する情報・データの収集方法を検討する。地球規模、地域・国レベルでのプラスチック廃棄物の防止・最少化および環境に配慮した管理のための政策、戦略および規制の開発、改善および実施に関するパイロットプロジェクトを推進し、使い捨てプラスチック、漁具等のプラスチックのリサイクルを改善するためのより良い技術を検討する。
民間との協力
特に製品の設計段階で、プラスチックを含む製品の耐久性、再利用性、修復性およびリサイクル性を高めるための情報を収集する。再生プラスチックの品質について可能な限り高い品質を維持する方法や、プラスチック廃棄物の分離、リサイクルの経済性の向上を目指す。これには、生産者、製造業者、小売業者、回収・リサイクル業者などのパートナーシップが必要である。

参考資料

OECD

OECDは、2018年5月29〜31日にデンマークで開催された「循環経済におけるプラスチックに焦点を当てた環境に関するグローバルフォーラム-化学物質の観点からのプラスチックの持続可能な設計」における議論に基づいて、持続可能なプラスチックを定義やる基準に関する文書を公表した。


持続可能なプラスチックとは、製品のライフサイクル全体にわたって、ヒト健康や環境影響について安全性を高めながら、社会的利益をもたらす製品に使用されるプラスチック材料と考えられる。持続可能とみなすためには、製造から廃棄まですべての段階で適切に管理されなければならない。有害物質・有害成分を含まない容易にリサイクル可能なプラスチックであっても、ゴミとなって廃棄され、土壌や海洋を汚染する場合は、持続可能なプラスチックとみなすべきではない。


持続可能なプラスチックは、その性能や機能に加え、エコシステムを考慮した設計が必要とされる。

  • ライフスタイルを考慮した総合的なシステム設計:製造からリサイクルまで、循環性を考慮して設計する。
  • リソース効率の最適化:原材料となるリソースの再生を考慮して、枯渇や散逸によるリソースの消失を避ける。

参考資料

WHO

WHOは、飲料水中のマイクロプラスチックに関する研究報告を発表した。
この報告書では、飲料水(水道水、ボトル入り飲料水)におけるマイクロプラスチックの混入、マイクロプラスチックのばく露によるヒト健康影響、および排水処理におけるマイクロプラスチックの除去について検証されている。


WHO の公衆衛生、環境、社会決定要因の部長であるマリア・ネイラ博士は、「限られた情報ではあるが、飲料水中のマイクロプラスチックは現在のレベルで健康上のリスクをもたらすとは思われない。しかし、さらに調査を継続して世界的なプラスチック汚染を阻止する必要ある。」と述べている。
飲料水中のマイクロプラスチックについては、150 μmを超えるマイクロプラスチックは体内に吸収される難く、一方、ナノサイズを含む小さな粒子の体内吸収や体内分布は高いと思われる。しかしこれらのデータは極めて限られている。マイクロプラスチックへのばく露とそれらがヒト健康に及ぼす潜在的な影響をより正確に評価するには、水中のマイクロプラスチック粒子の標準的な測定法の確立、淡水におけるマイクロプラスチックの発生源と発生に関する研究など、さらなる研究が必要である。


現在WHOは、飲料水について、致死的な下痢性疾患を引き起こす微生物など、ヒト健康リスクの高い病原微生物や化学物質の除去を推奨している。これら排水や飲料水の処理はマイクロプラスチックの除去に効果的であり、マイクロプラスチックの90%以上を除去することができる。

米国

米国化学協議会(American Chemistry Council、ACC)は、プラスチックの回収とリサイクルに関する法案(アイオワ州SF534、テネシー州SB923)の可決を歓迎している旨のコメントを発表した。


SF 534およびSB 923法案の可決により、アイオワ州とテネシー州は、使用後のプラスチックを貴重な原材料に変換する環境ビジネスの素地ができ、より多くのプラスチック資源を埋立地から排除することができるようになる。これは、フロリダ州、ウィスコンシン州、ジョージア州に続くものであり、ACCは、使用後のプラスチックを「廃棄物」ではなく、化学原料、原油、輸送燃料あるいは他の製品に変換する「製造」のための原料として扱うことにより、新規ビジネスの創出につながるものと期待している。


アイオワ州では、使用済みプラスチックを輸送用燃料に変換すると、毎年98000台の車を動かせると推定されている。アイオワ州と近隣の州の使用済みプラスチックの25%を製造用原料や輸送用燃料に変換することにより、回収・リサイクル設備を稼働し、毎年3億900万ドルの経済的生産を生み出すことができる。また、テネシー州では、使用済みプラスチックを輸送用燃料に変換すると、毎年219,000台の車を動かせると推定されている。同様に使用済みプラスチックの25%を製造用原料や輸送用燃料に変換することにより、毎年2億6400万ドルの経済的生産があると推察している。


プラスチックリサイクルと回収に関する潜在的な経済効果は、米国では100億ドル近くになると推定され、フロリダ、ウィスコンシン、ジョージア、アイオワ、テネシーにおけるプラスチック回収法案が他の州にも拡大することを期待している。

ガーナ

ガーナ政府は、Global Plastic Action Partnership(GPAP)に参加することを正式に表明した。ガーナはGPAPと提携するインドネシアに次いで2番目の国となり、最初のアフリカ諸国となる。


ガーナでは、大統領の下、250人以上の議員、ビジネスリーダー、廃棄物管理の専門家等から構成されたGhana National Plastic Action Partnership (NPAP)が組織されている。今後は、NPAPを中心にGPAPと連携して、プラスチックの生産、使用、再利用方法を根本的に改革することにより、循環プラスチック経済への移行を目指すことになる。


プラスチック廃棄物と汚染削減を加速するための戦略として、NPAPは2つの主要な取り組みを推進する。

バリューチェーン全体でのプラスチック管理
プラスチックのライフサイクルを通じて、すべての段階で持続可能性と再利用性を検討し、バリューチェーン全体でプラスチック管理を変革する。さらに、循環プラスチック経済への移行を推進することで、廃棄物管理部門での新しい雇用創出、プラスチック廃棄物から漏出する有害化学物質の軽減を目指している。
廃棄物の回収
国連開発計画(United Nations Development Programme、UNDP)が促進するガーナでの廃棄物回収プラットフォームは、廃棄物回収に関するデータ整備、技術革新を目指しており、今後は、NPAPと協力して、プラスチック循環経済への移行を支援する。

参考資料

ケニア

ケニア環境管理庁(National Environment Management Authority、NEMA)は、化学品管理に関する法規制(案)を公表した。
国連GHSガイドライン改訂7版に準拠したGHS分類、SDS作成が要求されている。

参考資料

欧州

欧州化学品庁(ECHA)は、ニュースレターのゲストコラム欄に、Justine Maillot(Rethink Plasticアライアンス、ポリシーコーディネーター)の「プラスチック汚染の見えない側面」を掲載した。


Rethink Plasticアライアンスは、EU各国でプラスチック汚染の撲滅に取り組んでおり、 有害性のない循環社会に向けて、ECHAと加盟国のすべての政策プロセスを引き続きサポートする。ニュースレターでは、「有害性のない循環社会に向けて」「マイクロプラスチックとREACH規制」「サプライチェーンでの透明性とトレーサビリティ」について議論されている。

有害性のない循環社会に向けて
使い捨てプラスチックや海岸のプラスチックごみが注目されているが、プラスチック汚染の目に見えない側面として、プラスチックに含まれる有害な化学物質によるヒト健康影響や環境生物保護にも注力すべきである。REACH規制の下で、有害性が懸念されるSVHCが制限され、より安全な代替品に置き換えられている。
例えば、プラスチックの添加剤として使用されるフタル酸エステル類やビスフェノール系物質などである。
私たちは、プラスチック汚染の目に見える側面と目に見えない側面の両方に取り組む必要がある。
マイクロプラスチックとREACH規制
現在、10,000~60,000トン/年の意図的に添加されたマイクロプラスチックが環境に放出されている。これらは環境中に長期間残留する。Rethink Plasticアライアンスは、ECHAが進める意図的に添加されたマイクロプラスチックの規制をサポートしている。生分解性基準への適合を含め免除なしに完全に制限されることを期待している。
サプライチェーンでの透明性とトレーサビリティ
Rethink Plasticアライアンスは、ECHAが推進するSVHCの含有に関するデータベース作成作業をサポートしている。廃棄物フレームワーク規制の下、有害化学物質に関するサプライチェーンでの透明性とトレーサビリティが求められる。

REACH規則の下で、意図的に添加されるマイクロプラスチックの使用が制限されることから、マイクロプラスチックを使用した人工芝ピッチのスポーツ施設が規制されることになるとの報道がある。


これに対して、欧州化学品庁(ECHA)は、人工芝ピッチで一般的に使用される粒状充填材は、「意図的に加えられたマイクロプラスチック」であると理解されるが、欧州委員会やECHAは、これら施設の閉鎖を提案してはいない。との情報を発信した。


欧州委員会とECHAは、2019年3月に、REACH規則の枠組みの中で意図的に添加されたマイクロプラスチックの制限に関する規制案を公表した。規制案は、幅広い用途に対応するもので人工芝も対象になるが、コルク、ココナッツ繊維、オリーブの芯、その他の代替材料など、代替の充填材料を使用した場合の経済性、さらに、人工芝ピッチから環境への流出を防ぐために有効な技術的対策を含めて、今後、規制する意義や除外の必要性を評価する予定である。

参考資料

ストロー、綿棒のような使い捨てプラスチック製品を2021年までに禁止する指令「Directive (EU) 2019/904 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 on the reduction of the impact of certain plastic products on the environment 」が官報に公表された。
この指令は、特定の使い捨てプラスチック製品、オキソ分解性プラスチック製品およびプラスチックを含む漁具が、環境およびヒト健康に及ぼす影響を防止・軽減することを目的としている。

製品毎に、使い捨てプラスチック製のカトラリー、皿、ストロー、綿棒、および風船スティック等は2021年までに禁止など、規制内容が定められている。

1)消費量の削減
附属書Aに記載された使い捨てプラスチック製品について、消費量を2022年と比較して2026年までに量的削減を達成しなければならない。
  • 包装やフタを含む飲料用カップ
  • 食品容器
2)上市の制限
附属書Bに記載されている使い捨てプラスチック製品およびオキソ分解性プラスチック製の製品の販売を禁止する。(2021年まで移行期間あり)
  • 綿棒
  • カトラリー(フォーク、ナイフ、スプーン、箸)
  • プレート
  • ストロー
  • 飲料用スターラー
  • 風船
  • 発泡ポリスチレン製の食品容器
  • 発泡スチロール製の飲料用カップ(カバーとフタを含む)
3)製品への要求
附属書Cに記載されているプラスチック製の蓋と蓋を有する使い捨てのプラスチック製品については、製品の意図された使用中にキャップと蓋が容器に取り付けられたままである場合にのみ上市することができる。(2024年まで移行期間あり)
  • 最大3リットルまでの容器
  • プラスチック製のキャップと蓋を持つガラス製または金属製の飲料容器
  • 飲料容器
4)マーキング要件
附属書Dに記載されている各使い捨てプラスチック製品について、廃棄時の注意事項等に関するマーキングが必要になる。
  • 生理用用品(ナプキンパッド、タンポンおよびタンポンアプリケータ)
  • ウェットワイプ
  • フィルター付きタバコ製品
  • 飲料用カップ

その他、使い捨てプラスチック製品および漁具について、廃棄物の収集、輸送、処理に関する費用を生産者が負担するようにする「生産者責任の拡大」、また、リサイクルのための「分別収集」が要求されている。

参考資料

国連GHSガイドライン改訂6版、改訂7版に準拠して改定された。

参考資料

  • Commission Regulation (EU) 2019/521 of 27 March 2019 amending, for the purposes of its adaptation to technical and scientific progress Regulation (EC) No 1272/2008 of the European Parliament and of the Council on classification, labelling and packaging of substances and mixtures (Text with EEA relevance.)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32019R0521

欧州化学品庁(ECHA)は、化粧品や洗剤、塗料、建材等の専門家用途について、マイクロプラスチックの意図的な添加が制限される。化学物質あるいは混合物として、マイクロプラスチックを0.01 w/w%以上含む製品の上市が制限される。


マイクロプラスチックは、固形ポリマーを含有する粒子で、添加剤等の他の物質が添加されているものを含め、1 w/w%以上が、ⅰ)粒子サイズ1nm~5mm、あるいはⅱ)繊維の場合には長さが3nm~15mmで、直径に対する長さの比が3より大きいものを指す。マイクロプラスチックは、様々な分野、例えば農業、園芸、化粧品、塗料、コーティング、洗剤、医薬品、医療機器等に応用されている。


ただし、天然に存在するポリマー、生分解性ポリマー、環境中にマイクロプラスチックが放出されないような消費者あるいは専門家による特定の用途については、規則からの除外されている。なお、除外用途については、毎年ECHAに報告する必要があり、さらに、ラベルやSDSによる情報提供が要求されている。


この制限提案には、6年間の経過措置が含まれている。ただし、研磨剤として使われるマイクロプラスチックの利用は、発効後、直ちに禁止される。

参考資料

ECHAはCLP規則入門ガイダンスの改訂(第3版)を公表した。
第3版では、第9次から第12次ATP(Adaptations to Technical and Scientific Progress)が追加されアップデートされている。

中国

中華人民共和国国家開発改革委員会は、2019年8月に承認された「産業構造調整指導目録(2019年版)」を公表した。旧「産業構造調整指導目(2011年版)」は廃止された。


産業構造調整指導目録は、「産業構造調整を促進するための暫定規則(2005年)」の補助文書であり、種々の産業分野で推奨される施策が指導目録として掲載されている。


以下、抜粋する。

  • 使い捨て発泡プラスチック製食器類・使い捨てプラスチック綿棒(2020年12月31日から禁止)
  • プラスチック製マイクロビーズを含む日用品(2020年12月31日までの生産禁止、2022年12月31日の販売禁止)
  • 厚さ0.025 mm未満の極薄ビニール袋、厚さ0.01 mm未満のポリエチレン農業用マルチフィルム(2020年1月1日から禁止)

参考資料

台湾

2017年8月3日、行政院環境保護署は「マイクロプラスチック・マイクロビーズを含む日用品、化粧品の製造、輸入、販売に関する規制」を公布した。この規制は、マイクロプラスチック・マイクロビーズを含有する消費者製品の削減に効果があったが、海中で分解されないような非天然ポリマーのような課題が明らかになった。


今回の改定では、日用品や化粧品中のマイクロプラスチック・マイクロビーズに関するスウェーデンの規制を参考に、以下のように改定されている。

  • マイクロプラスチック・マイクロビーズについて、固形合成ワックスのような非天然ポリマー粒子と規定し、天然ポリマーと区別している。
  • 固形合成ワックスのような非天然ポリマー粒子を含有する日用品や化粧品について、2019年9月1日以降、製品を製造・輸入はできない。また、2020年3月1日以降、製品を販売できない。

参考資料

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