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GHS・SDS・法規制ニュース(2022年)

GHS分類、SDS作成、化学品管理に関連した各国の法規制情報をご提供いたします。

国連

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、2021年に実施した5種類の工業用化学物質(1,1,1-トリクロロエタン、1,2-ジフェニルヒドラジン、ジフェニルアミン、N-メチロールアクリルアミド、およびイソホロンの発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。

1,1,1-トリクロロエタンは、1978年、1987年、1998年に検討され、発がん性についてグループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)に分類されている。またN-メチロールアクリルアミドは、1994年に検討され、発がん性についてグループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)に分類されている。1,2-ジフェニルヒドラジン、ジフェニルアミン、およびイソホロンは、これまでに評価されたことはない。

1,1,1-トリクロロエタン
  • ヒトの疫学調査において、多発性骨髄腫との関連性が示唆された。
  • 動物実験では、吸入ばく露試験において、マウスの雄で脾臓の悪性リンパ腫、肺の細気管支・肺胞腺腫、細気管支・肺胞腺がんが発生し、雌でも肺の細気管支・肺胞腺腫、腺がんが増加した。
  • ラットの雄では腹膜中皮腫が増加した。経口投与試験では、ラットの雄で諸臓器の白血病が増加した。
  • ヒトに対する発がん性を示す証拠は限定的であるが、動物実験では発がん性を示す十分な証拠があることから、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
1,2-ジフェニルヒドラジン
  • 動物実験において、経口投与試験では、マウスの雌で肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がんが見られ、ラットでも雄では肝臓の腫瘍性結節、肝細胞がん、耳管、ジンバル腺、耳の扁平上皮乳頭腫、扁平上皮がん、副腎の褐色細胞腫(良性・悪性)、雌では乳腺の腺がんが発生した。腹腔内投与試験では、マウスで肺腫瘍(雌雄)の増加が認められた。
  • これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
ジフェニルアミン
  • 動物実験において、経口投与により、マウスの雄で肝臓、脾臓等の諸臓器の血管腫、血管肉腫、雌で子宮の組織球肉腫が発生した。ラットの雄では脾臓や諸臓器の血管腫、血管肉腫、皮下組織の線維腫、線維肉腫、雌では子宮の腺腫、腺がん、脾臓の単核球性白血病が発生した。
  • これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
N-メチロールアクリルアミド
  • 動物実験において、経口投与により、マウスの雄では肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がん、肺の細気管支・肺胞腺腫、腺がん、雌では肺の細気管支・肺胞腺腫、腺がん、ハーダー腺の腺腫、腺がんが増加した。
  • これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
イソホロン
  • ヒトにおいて、中枢神経系腫瘍の発生との関連が報告されている。
  • 動物実験では、経口投与により、マウスの雄では皮膚や皮下組織の間葉系腫瘍(線維腫、線維肉腫、神経線維肉腫等)、肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がん、悪性リンパ腫が発生した。ラットの雄では包皮腺の腺がん、腎臓の尿細管腺腫、腺がんが発生した。
  • ヒトに対する発がん性を示す証拠は不十分であるが、動物実験では発がん性を示す十分な証拠があることから、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

  • 1,1,1-Trichloroethane and Four Other Industrial Chemicals、IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans Volume 130 https://publications.iarc.fr/611

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、2021年に実施した5種類の染料(ゲンチアナバイオレット、ロイコゲンチアナバイオレット、マラカイトグリーン、ロイコマラカイトグリーン、およびCIダイレクトブルー218)の発がん性評価について、IARCモノグラフを公表した。

用途
ゲンチアナバイオレット、マラカイトグリーンは、カチオン性トリフェニルメタン染料として、繊維製品、紙、アクリル製品に用いられ、一部の染毛剤、化粧品にも使用されている。抗菌性や抗真菌性を有するために、家畜等の動物飼料、観賞用魚類や養殖魚介類を含む獣医、水産養殖用途にも使用されている。
ロイコゲンチアナバイオレットとロイコマラカイトグリーンは、前駆体として親化合物の製造における使用され、また分析化学における発色試薬、線量計における放射性色素としての用途も有している。
CIダイレクトブルー218は、銅キレート化ジメトキシベンジジンをベースとするアゾ染料で、セルロース、酢酸塩、ナイロン、シルク、ウール、ティッシュ、上質紙、および繊維製品に使用されている。
発がん性評価
ゲンチアナバイオレット
動物実験において、マウスでは肝臓の肝細胞がん、諸臓器(膀胱、卵巣、子宮、膣)の組織球肉腫が認められ、ラットでは甲状腺の濾胞細胞腺がん、単核球性白血病が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
ロイコゲンチアナバイオレット
ヒトや動物実験において発がん性を示すデータが報告されていないことから、IARCはグループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)に分類している。
マラカイトグリーン
動物実験において、ラットで甲状腺の濾胞細胞腺腫、濾胞細胞腺がんが認められたが、IARCはグループ3(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)に分類している。
ロイコマラカイトグリーン
動物実験において、マウスでは肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がんが認められた。ラットでは甲状腺の濾胞細胞腺腫、濾胞細胞腺がん、乳腺の腺腫、腺がんが認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。
CIダイレクトブルー218
動物実験において、マウスでは肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がんが認められ、ラットでは咽頭の扁平上皮乳頭腫、扁平上皮がんが認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

米国

米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition65の発がん物質リストに3物質を追加する予定である。

対象物質
  • 1-ブロモ-3-クロロプロパン(CAS RN 109-70-6)
  • 1-ブチルグリシジルエーテル(CAS RN 2426-08-6)。
  • グリシジルメタクリレート(CAS RN 106-91-2)

これらの物質について、国際がん研究機関(IARC)は、動物試験において発がん性が認められことからグループ2A(probably carcinogenic to humans)あるいはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)であると結論している。

国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)

IARCは2020年に発がん性評価を実施し、以下のように結論している。


  • 1-ブロモ-3-クロロプロパン(CAS RN 109-70-6)

動物実験において、マウスでは、肺の細気管支・肺胞腺腫、細気管支・肺胞腺がん(雌雄)、前胃の扁平上皮乳頭腫(雌雄)、肝臓の肝細胞腺腫(雄)、ハーダー腺腺腫(雌雄)がみられ、ラットでは、肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がん(雌雄)、血管肉腫(雌)、脾臓の単核球性白血病(雌)、肺の細気管支・肺胞腺腫(雌雄)、皮膚の毛嚢上皮腫(雄)、大腸の腺腫(雄)が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。


  • 1-ブチルグリシジルエーテル(CAS RN 2426-08-6)

動物実験において、マウスでは、肺の細気管支・肺胞腺腫、細気管支・肺胞腺がん(雌雄)、前胃の扁平上皮乳頭腫(雌雄)、肝臓の肝細胞腺腫(雄)、ハーダー腺腺腫(雌雄)がみられ、ラットでは、肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がん(雌雄)、血管肉腫(雌)、脾臓の単核球性白血病(雌)、肺の細気管支・肺胞腺腫(雌雄)、皮膚の毛嚢上皮腫(雄)、大腸の腺腫(雄)が認められた。
これらの結果から、IARCはグループ2B(possibly carcinogenic to humans)に分類している。


  • グリシジルメタクリレート(CAS RN 106-91-2)

動物実験において、マウスでは、鼻腔の血管腫、血管肉腫(雌雄)、肺の細気管支・肺胞腺がん(雌)、子宮の組織球肉腫、ハーダー腺腺腫(雌)、鼻腔の腺腫、前胃の扁平上皮乳頭腫、ハーダー腺腺腫(雄)がみられ、ラットでは、鼻腔の扁平上皮がん(雌雄)、神経上皮がん、腺腫、腹膜の中皮腫、皮下の肉腫、皮膚の基底細胞上皮腫、角化棘細胞腫(雄)、乳腺の線維腺腫、子宮の内膜間質肉腫、皮下の線維腫、甲状腺のC細胞腺腫、陰核腺の腺腫(雌)が認められた。
さらに、本物質が反応性グリシジルエポキシド類に属すると考えられることから、IARCはグループ2A(probably carcinogenic to humans)に分類している。

参考資料

カリフォルニア州の環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、ビスフェノールA(以下、BPA)の発がん性に関する評価案として、各種の文献をまとめた「ビスフェノールAの発がん性に関する証拠」を公表した。

この評価案は、2021年12月までに公表された文献についてレビューしたものである。

ヒトの疫学調査
  • 乳がんに関する疫学調査が報告されているが、尿、血清、乳房脂肪組織中の BPA濃度と乳がんの発生に一貫性は見られなかった。
  • 前立腺がんについては、正の相関性が報告されているが、ばく露量の測定誤差、検出限界値の問題など、課題が指摘されている。
  • その他、BPAと甲状腺がんの関連性等が報告されているが、結論には至っていない。
動物を用いた発がん性試験

BPAの発がん性試験は、F344ラット(雌雄)、SDラット(雌)、SD (NCTR) ラット(雌雄)、 Wistar‑Furthラット(雌)、B6C3F1マウス(雌雄)、Agouti+/– C57BL/6J:C3H/HeJ マウス(雌雄)、CD‑1マウス(雌)、スナネズミ(雄)が報告されており、以下の臓器・組織において腫瘍性病変の発生が認められた。

  • 肝臓:SD (NCTR)ラット、Agouti+/– C57BL/6J:C3H/HeJ マウス
  • 下垂体:F344 ラット、B6C3F1マウス
  • 甲状腺:SD (NCTR) ラット
  • 乳腺:F344 ラット、SD (NCTR) ラット
  • 陰核腺、子宮:SD (NCTR) ラット
  • 精巣:F344 ラット血液リンパ系(白血病、リンパ腫)F344ラット、SD (NCTR) ラット、B6C3F1 マウス

トランスジェニック動物モデルを用いた研究では、マウス乳腺腫瘍モデル (MMTV‑erbB2) において、BPAによる乳腺腫瘍の発達促進、肺転移の増加等が報告されている。

その他

遺伝毒性として、BPAのばく露によるDNA損傷、染色体への影響が認められた。また、エピジェネティックな作用による遺伝子への影響を誘発する可能性がある。

慢性炎症の誘発、免疫抑制作用、エストロゲン作用、抗アンドロゲン作用、抗甲状腺ホルモン作用等が報告されている。

参考資料

繊維製品および化粧品におけるPFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物)の使用を禁止する法案について、カリフォルニア州知事が承認した。

カリフォルニア州では、2023年1月からPFASを含む食品包装の販売が禁止されるが、さらに、2025年1月から、PFASを含む繊維製品および化粧品の製造、販売が禁止される。

繊維製品

衣料、ハンドバッグ、バックパック、ドレープ、シャワーカーテン、家具、室内装飾品、寝具、タオル、ナプキン、テーブルクロス等の家庭で通常使用される繊維製品が対象となる。
ただし、他の法令で規制されるカーペット、敷物等は、本法案の対象から除外されている。

PFASの意図的な添加が禁止されるが、全有機フッ素含有量に閾値が設定されている。

  • 2025年1月から100ppm
  • 2027年1月から50ppm
化粧品

ヒトの体に塗布や噴霧することを意図した化粧品で、個人用、業務用のいずれも対象となる。2025年1月からは、PFASを意図的に添加した製品の製造、販売が禁止される。

参考資料

カリフォルニア州の有害物質管理局(Department of Toxic Substances Control、DTSC)は、タイヤメーカーに対して、6PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン)の代替品を検討するよう要求する予定である。

6PPD
用途
タイヤの老化防止剤として添加されている。
有害性
皮膚感作性や魚毒性等の有害性を有している。特に、魚毒性について、6PPDは環境中で6PPDキノン体に変化し、6PPDキノン体が極めて強い魚毒性を有していることが明らかになっている。
環境濃度
6PPDキノン体は、カリフォルニア州の河川で検出され、半数致死量に匹敵する濃度であることが報告されている。

カリフォルニア州の6PPD代替に関する提案は、米国の研究者が絶滅に瀕しているコーホーサーモンの減少と自動車タイヤに使用される6PPDとの関連性を発見したことが発端となっている。

カリフォルニア州の水系からは6PPDキノン体が検出されており、絶滅危惧種であるコーホーサーモンを脅かすばかりでなく、さらにコーホーサーモンを伝統的に重要な食料源にしているネイティブアメリカンの部族にも影響を与えている。

参考資料

米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、Proposition65の発がん物質リストにペルフルオロオクタン酸(PFOA、CAS RN 335-67-1)を追加した。

今回の追加は、米国NTP(National Toxicology Program)におけるPFOAの発がん性評価に基づいている。

米国NTPでは、ラットを用いた2年間の発がん性試験を実施した結果、肝臓において腫瘍性病変の発生増加が認められた。肝細胞腺腫は低用量から見られ、高用量では肝細胞がんの発生も認められた。また、膵臓では腺房細胞の腫瘍性病変(腺腫および腺がん)が増加した。

なお、PFOAは発生毒性が認められたことから、2017年に生殖毒性物質リストに収載されている。

参考資料

米国環境保護庁(EPA)は統合リスク情報システム(IRIS)において、ペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)の有害性を評価しレビュー(案)を公表した。

対象物質
PFHxA(CAS RN 307-24-4)およびその関連塩は、ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)であ。また、pH4〜9の水溶液(ヒト体内など)において完全な解離が予想されることから、ペルフルオロヘキサン酸アンモニウム(PFHxA-NH4、CAS RN 21615-47-4)や、ペルフルオロヘキサン酸ナトリウム(PFHxA-NA、CAS RN 2923-26-4)など、PFHxAの非金属塩、アルカリ金属塩を含んでいる。
用途・環境挙動
PFHxAは、写真フィルムの製造、消費者製品における長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)の代替品として使用され、また食品包装、カーペット、布地に使用されている他のPFAS類から、分解により生成される。
環境中では、加水分解、光分解、生分解に対して耐性を示すことから、環境中に長期間存在し、土壌、地下水、河川、さらに農作物からも検出される。
そのため、ヒトは、屋内や屋外の大気、飲料水、食品の摂取、さらにPFHxAを含有する製品との接触等により、PFHxAにばく露される可能がある。
ヒト健康影響
ヒトの疫学研究では、PFHxAばく露と、肝臓の酵素、甲状腺ホルモン、血中脂質、血圧、インスリン抵抗性、体重、精液パラメーター、生殖ホルモン、喘息などの健康パラメーターとの関連について調査されているが、明確な結論は得られていない。
動物実験では、経口投与により以下のような有害性が報告されている。
  • 肝臓への影響:肝臓重量の増加、肝細胞肥大
  • 造血器系への影響:赤血球数の減少、ヘマトクリット値の低下、網状赤血球の増加
  • 生殖発生への影響:周産期死亡率の増加、児動物の体重減少
動物実験の結果に基づいて、参照用量(RfD、Reference Dose)※を、5 x10-4 mg/kg/dayとしている。
※、非発がん影響を対象とした有害性がないと推測される摂取量

参考資料

カナダ

カナダ保健省は、国連GHS改訂7版に準拠した危険有害性製品規則の改定を官報に公表した。3年間の移行期間が設けられている。

主な変更点を示す。

可燃性ガス(パート7物理的危険性、サブパート2)

区分1は区分1Aと1Bに細分類され、区分1Aには、自然発火性ガスと化学的に不安定なガスが含まれる。区分1Bは、自然発火性または化学的に不安定でなく、区分1Aよりも危険性が低い可燃性ガスが含まれる。

エアロゾル(パート7物理的危険性、サブパート3)

区分3の不燃性エアロゾルが追加された。

加圧下化学品(パート7物理的危険性、サブパート21)

国連GHS改訂8版に準拠した「加圧下化学品」が導入された。

  • 区分1:質量で85.0 %以上の可燃性成分を含み、燃焼熱が20 kJ/g以上
  • 区分2:質量で1.0 %を超える可燃性成分を含み、燃焼熱が20 kJ/g未満
        又は、質量で85.0 %未満の可燃性成分を含有し、燃焼熱が20 kJ/g以上
  • 区分3:質量で1.0 %以下の可燃性成分を含み、燃焼熱が20 kJ/g未満
その他
  • 水と接触すると有毒ガスを発生するが、元の乾燥状態では毒性がない物質の分類と識別について追加された。(パート8健康有害性、サブパート8.1.1(2))
  • 皮膚刺激性、眼刺激性については、含有量等の成分情報に基づいた分類項目が追加された。(パート8健康有害性、サブパート2および3)

参考資料

カナダ当局は、ガソリン中に含まれるベンゼンの有害性が懸念されることから、ガソリンスタンドの近隣住民が蒸散したベンゼンを吸入した場合のリスクについて評価し、報告書(案)を公表した。

ガソリン中のベンゼンについて
ガソリン中のベンゼンは、カナダ環境保護法(CEPA1999)において、含有量は年間平均0.95%、最大1.5%に規制されており、ガソリンの組成調査では、ベンゼンの含有量は平均0.6%であった。
ベンゼンの有害性について
国際がん研究機関(IARC)は、ベンゼンの疫学調査における急性骨髄性白血病の発生やその他のヒトや動物における発がん性に基づいて、ベンゼンをグループ1発がん物質(ヒトに対して発がん性がある)に分類している。また、ベンゼンのばく露量と発がんリスクレベルについて、ばく露量が0.29 ~ 2.9μg/m3の場合、リスクは1 x 10-6 ~ 1 x 10-5のレベルに相当すると推定している。
また、米国EPA(環境保護庁)では、ベンゼンのばく露量とリスクレベルについて、ばく露量が0.13 ~ 0.45μg/m3の場合、リスクレベルは1 x 10-6に相当し、1.3 ~ 4.5μg/m3では1 x 10-5と推定している。
ベンゼンのばく露について
ガソリンスタンド周辺での空気中に拡散するベンゼンについて、大気拡散モデルを用いてシミュレーションした結果、空気中のベンゼン濃度は、ガソリンスタンドから20mの距離では、0.88 ~ 9.2μg/m3と推定された。

また、これらの濃度のベンゼンを吸入した住民のリスクは、3x10-6 ~ 32x10-6のレベルに相当すると推定された。
まとめ
ガソリンスタンドの近隣住民では、懸念されるリスクレベル(10 x 10-6以上)を超えるばく露があると推定されることから、蒸気の回収によるガソリンスタンドから蒸散防止、住宅地とガソリンスタンドの充分な距離の確保等のリスク管理措置が必要とされる。

注)リスクレベル

1 x 10-6のリスクレベルは、100万人に1人の割合でリスクが増加することを示しており、疫学や動物試験の結果に基づいて、ばく露と発生率から推定される。この報告書(案)では、100万人に10人以上(10 x 10-6以上)のリスク増加について懸念を示している。

カナダ当局は、カナダ環境保護法(CEPA)の下、製品中の揮発性有機化合物(VOC)の濃度に関する制限を公表した。

  • VOCは、塗料、ワニス、化粧品、洗浄、消毒、脱脂製品など、さまざまな製品から放出される。2003年、VOCは、スモッグの原因物質であるオゾンや粒子状物質を形成する前駆体として作用することから、CEPAの毒性物質リスト(スケジュール1)に追加された。
  • カナダ政府は、消費者製品からのVOC放出量を自主的に削減するため、VOC濃度制限に関する自主ガイドラインを作成した。このガイドラインには41種の製品カテゴリーについてVOC濃度制限に関する推奨値が記載されている。
    しかしながら、このガイドラインでは不十分で、多くの製品カテゴリーにおいてVOC濃度は依然として自主的な制限を超えていることが判明した。調査研究では、消費者が使用する特定の製品から、推定50キロトン/年のVOCが放出されていることが示されている。
  • 今回の規制は、カナダの製造業者、輸入業者に適用され、約130の製品カテゴリーおよびサブカテゴリーにVOC濃度制限が設けられている。これにはパーソナルケア製品、自動車、家庭用メンテナンス製品、接着剤、接着剤除去剤、シーラント、充填剤等が含まれている。
    • VOC濃度制限:VOC濃度がそれぞれのカテゴリー固有の制限を超える製品の製造および輸入が禁止される。
    • ラベル付け、報告、記録保管:規制対象製品の製造業者・輸入業者は、製品コンテナに製品が製造された日付や日付を表すコードを示す必要があり、必要に応じて、規制製品の製造と輸入に関する記録を保管する。
    • 許可:技術的または経済的な理由により規制要件を満たすことができない製品に対する一時的な許可申請の規定が含まれる。また、使用方法によってVOC放出量が減少する場合は、製品中のVOC濃度が制限を超えることも許可される。など
  • 参考資料

欧州

欧州化学品庁(ECHA)は、9物質をREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加した。

2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン-2-イル)モルホリンと2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(ヘプタフルオロプロピル)モルホリンの反応生成物
  • 水中半減期が60日、土壌中半減期が180日、BCFが5000をいずれも上回ることから、vPvB作用が懸念される。
ペルフルオロヘプタン酸及びその塩
  • ペルフルオロヘプタン酸アンモニウム CAS RN 6130-43-4、ペルフルオロヘプタン酸カリウム CAS RN 21049-36-5、ペルフルオロヘプタン酸 CAS RN 375-85-9、ペルフルオロヘプタン酸ナトリウム CAS RN 20109-59-5
  • 生殖毒性(区分1Bに分類される)、PBT、vPvB(PFOA等のペルフルオロアルキル化合物と同様に環境中に長期間残留する)の各作用が懸念される。
メラミン
  • CAS RN 108-78-1
  • 環境中に長期間残留し、魚類等の環境生物への影響が懸念される。尿路系の毒性、発がん性、生殖毒性からヒト健康影響が懸念される。
イソブチル4-ヒドロキシベンゾアート
  • CAS RN 4247-02-3
  • エストロゲン受容体との結合や子宮増殖試験等の結果からエストロゲン様の作用が示唆され、内分泌かく乱作用が懸念される。
ビス(2-エチルヘキシル)テトラブロモフタル酸
  • CAS RN 26040-51-7
  • 環境中に長期間残留し、BCFが5000を上回ることから、vPvB作用が懸念される。
ホウ酸バリウム
  • CAS RN 13701-59-2
  • 生殖毒性が懸念される。(区分1Bに分類される)
4,4′-スルホニルジフェノール
  • CAS RN 80-09-1
  • エストロゲン様の作用やステロイド合成への影響から内分泌かく乱作用が懸念される。また、これらの作用を介した性周期、繁殖性、仔動物への影響が認められ、ヒトや環境生物に対する内分泌かく乱作用や生殖毒性が懸念される。
2,2′,6,6′-テトラブロモ-4,4′-イソプロピリデンジフェノール
  • CAS RN 79-94-7
  • 発がん性が懸念される。(区分1Bに分類される)
1,1′-[エタン-1,2-ジイルビスオキシ]ビス[2,4,6-トリブロモベンゼン]
  • CAS RN 37853-59-1
  • 土壌中の半減期が180日を上回り、BCFも5000を上回ることから、vPvB作用が懸念される。

参考資料

BHT(Butylated hydroxytoluene)、アシッドイエロー3、ホモサレートおよびHAA299(Bis-(Diethylaminohydroxybenzoyl Benzoyl) Piperazine)の使用に関する化粧品規則(Regulation (EC) No 1223/2009)が改定された。

BHT(CAS RN 128-37-0)
  • 酸化防止剤として、化粧品に広く使用されている。
  • 内分泌かく乱作用が懸念されることから、消費者安全科学委員会(SCCS)の安全性評価に従って、最大濃度は、うがい薬で0.001%、歯磨き粉で0.1%、その他のリーブオンやリンスオフ製品について0.8%に制限された。
アシッドイエロー3(CAS RN 8004-92-0)
  • アシッドイエロー3は非酸化的ヘアカラー製品に使用されている。
  • SCCSにおける安全性評価に従って、最大濃度は0.5%に制限された。
ホモサレート(CAS RN 118-56-9)
  • UVフィルターとして使用されている。
  • SCCSにおける安全性評価に従って、最大濃度は7.34%(顔に使用する非スプレーやポンプスプレー製品)に制限された。
HAA299(CAS RN 919803-06-8)
  • UVフィルターとして使用されている。
  • 非ナノサイズのHAA299(中央粒径分布が134 nm以上)については、化粧品のUVフィルターとして最大濃度10%まで安全であるが、ナノサイズのHAA299(純度97%以上、中央粒子50nm以上)については、皮膚塗布する化粧品については最大濃度10%まで使用できるが、吸入ばく露に伴う肺炎の発生が懸念されることから、消費者が吸入する可能性のある用途での使用が制限された。

参考資料

欧州委員会は、下記のEU加盟国※に対して、「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」(2019年7月発効)(以下、使い捨てプラスチック指令)の実施を強化するよう要求した。
※ベルギー、デンマーク、エストニア、アイルランド、フランス、クロアチア、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、フィンランド

使い捨てプラスチック指令

2019年7月3日に発効し、加盟国は 2年間で国内法に移行しなければならないが、いくつかの加盟国では期限までに国内法に移行できていなかった。

2022年1月、欧州委員会は使い捨てプラスチック指令を国内法に移行していない16の加盟国に対して実施を要求し、その後、5か国(スペイン、キプロス、リトアニア、ルクセンブルグ、スロバキア)では必要な措置が講じられたが、上述の11か国では国内法の整備が不完全であった。

使い捨てプラスチックへの対応

使い捨てプラスチック指令の下で加盟国が講じなければならない主な措置は次のとおりある。

            
  • 代替品を推進する。ヨーロッパの海岸でよく見られる、以下の使い捨てプラスチック製品※が該当する。これらの使い捨てプラスチック製品と漁具と合わせると、欧州の海洋ごみ全体の 70%を占めている。
    ※綿棒、カトラリー、皿、ストローとマドラー、風船と風船用スティック、食品容器、飲料用カップ、たばこの吸い殻、プラスチックバッグ、パケット、ラッパー、ウェットティッシュ、衛生用品
  • 食品容器や飲料用カップの消費を削減して、再利用可能な代替品を促進する。
  • 使い捨てプラスチック製品の生産者責任スキームを確立し、生産者は廃棄物の収集、報告する。 また、これらの製品から生じるごみの清掃の費用を負担する。
  • 2029年までに、使い捨てプラスチック飲料ボトルの90%を回収する(例えば、デポジットによる払い戻し)。さらに、再生プラスチックの使用、飲料カップのキャップや蓋を本体に取り付ける等の製品設計を要求する。
  • 使い捨てカップ、衛生用品、たばこ製品のラベル表示を導入する。ゴミのポイ捨てによる悪影響を避けるために、製品にプラスチックが含まれていることを一般の人々に知らせ、適切な廃棄方法について助言する必要がある。
  • プラスチックを含む漁具の生産者は、廃棄物の収集、輸送、処理の費用を負担する。

参考資料

欧州委員会は、CLP規制の改定(案)を世界貿易機関(WTO)に通知した。
以下、改定案の概要を示す。

主な改定内容
  • 内分泌かく乱作用の追加
  • 難分解性、生物蓄積性および毒性 (PBT) および⾮常に難分解性、生物蓄積性が高い (vPvB) 物質の特定
  • 難分解性、移動性、毒性 (PMT) および⾮常に難分解性、移動性が高い (vPvM)物質の特
1)内分泌かく乱作用(ヒト)

<区分1>ヒトに対して内分泌かく乱作用あり
 ヒトや動物のデータから、「内分泌かく乱作用あり」、「次世代への影響あり」、かつ「内分泌かく乱作用と有害作用との間の生物学的関連性が明確」な場合
 ただし、生物学的関連性について、ヒトとの関連性が疑しい場合は区分2がより適切である。

<区分2>ヒトに対する内分泌かく乱作用が疑われる
 ヒトや動物のデータから、「内分泌かく乱作用や次世代への影響あり」、「区分1に分類するには証拠が不十分」、かつ「内分泌かく乱作用と有害作用との間の生物学的関連性が明確」な場合

<混合物の濃度限界値>区分1は0.1%、区分2は1%

2)内分泌かく乱作用(環境)

<区分1>環境に対して内分泌かく乱作用あり
 動物のデータから、「内分泌かく乱作用あり」、「次世代への影響あり」、かつ「内分泌かく乱作用と有害作用との間の生物学的関連性が明確」な場合
 ただし、集団あるいは亜集団レベルで、生物学的関連性について疑しい場合は区分2がより適切である。

<区分2>環境に対する内分泌かく乱作用が疑われる
 動物のデータから、「内分泌かく乱作用や次世代への影響あり」、「区分1に分類するには証拠が不十分」、かつ「内分泌かく乱作用と有害作用との間の生物学的関連性が明確」な場合

<混合物の濃度限界値>区分1は0.1%、区分2は1%

参考資料

3)PBT特性(難分解性、生物蓄積性、毒性)

<難分解性>
 次のいずれかの条件を満たす場合、難分解性 (P)と見なされる。

  • 海水中の分解半減期は 60日を超える。
  • 淡水または河口水中での分解半減期が 40日を超える。
  • 海底堆積物中の分解半減期は 180日よりも長い。
  • 淡水または河口水の堆積物における分解半減期は 120日よりも長い。
  • 土壌中の分解半減期は 120日を超える。

<生物蓄積性>
 水生生物の生物濃縮係数が 2000を超える場合、生物蓄積性(B)と見なされる。

  • 海洋生物または淡水生物の長期無影響濃度(NOEC)または EC10 が 0.01mg/L未満である。
  • 発がん性 (区分1A、1B)、生殖細胞変異原性 (区分1A、1B)、あるいは生殖毒性(区分1A、1B、2)を有する。
  • 特定標的臓器毒性(反復ばく露)(区分1、2)のように、慢性毒性を有する。
  • ヒトまたは環境に対する内分泌かく乱作用を有する。 (区分1)
  • <混合物の濃度限界値>0.1%

4)vPvB特性(非常に高い難分解性、生物蓄積性)

<難分解性>
次のいずれかの条件を満たす場合、非常に高い難分解性 (vP)と見なされる。

  • 海洋、淡水、または河口水における分解半減期は 60日を超える。
  • 海洋、淡水、または河口水の堆積物における分解半減期は180日よりも長い。
  • 土壌中の分解半減期は180日を超える。

<生物蓄積性>
水生生物の生物濃縮係数が5000を超える場合、非常に高い生物蓄積性(vB)と見なされる。

<混合物の濃度限界値>0.1%

参考資料

5)PMT特性(難分解性、移動性、毒性)

<難分解性>
 次のいずれかの条件を満たす場合、難分解性 (vP)と見なされる。

  • 海水中の分解半減期は 60日を超える。
  • 淡水または河口水中での分解半減期が 40日を超える。
  • 海底堆積物中の分解半減期は 180日よりも長い。
  • 淡水または河口水の堆積物における分解半減期は 120日よりも長い。
  • 土壌中の分解半減期は 120日を超える。

<移動性>
 log Kocが3未満の場合、移動性(M)と見なされる。
 イオン性物質の場合、pH4~9の最小log Koc値が3未満の場合、移動性(M)と見なされる。

<毒性>
 次のいずれかの条件を満たす場合、毒性 (T)と見なされる。

  • 海洋生物または淡水生物の長期無影響濃度(NOEC)または EC10 が 0.01mg/L未満である。
  • 発がん性 (区分1A、1B)、生殖細胞変異原性 (区分1A、1B)、あるいは生殖毒性 (区分1A、1B、2)を有する。
  • 特定標的臓器毒性(反復ばく露)(区分1、2)のように、慢性毒性を有する。
  • ヒトまたは環境に対する内分泌かく乱作用を有する。(区分1)

<混合物の濃度限界値>0.1%

6)vPvM特性(非常に高い難分解性、移動性)

<難分解性>
 次のいずれかの条件を満たす場合、非常に高い難分解性 (vP)と見なされる。

  • 海洋、淡水、または河口水における分解半減期は 60日を超える。
  • 海洋、淡水、または河口水の堆積物における分解半減期は180日よりも長い。
  • 土壌中の分解半減期は180日を超える。

<移動性>
 log Koc が2未満の場合、非常に高い移動性 (vM)と見なされる。
 イオン性物質の場合、pH4~9の最小log Koc値が2未満の場合、非常に高い移動性(vM)と見なされる。

<混合物の濃度限界値>0.1%

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、9物質についてREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加する予定である。

4,4′-スルホニルジフェノール (ビスフェノール S; BPS)
  • CAS RN 80-09-1
  • 生殖毒性、内分泌かく乱作用(ヒト、環境)が懸念される。
  • 用途:パルプ、紙・紙製品、織物、皮革・毛皮、化学薬品の製造に使用される。
ペルフルオロヘプタン酸
  • ペルフルオロヘプタン酸およびその塩
  • 生殖毒性、難分解性・生物蓄積性・毒性(PBT)、非常に高い難分解性・生物蓄積性(vPvB)、ヒト健康や環境に対して重篤な影響が懸念される。
  • この物質はREACH規制に登録されていない。
メラミン
  • CAS RN 108-78-1
  • ヒト健康や環境に対して重篤な影響をおよぼす恐れがある。
  • 用途:ポリマー樹脂、コーティング製品、接着剤、シーラント、皮革処理、実験用化学薬品に使用される。
4-ヒドロキシ安息香酸イソブチル
  • CAS RN 4247-02-3
  • 内分泌かく乱作用(ヒト)が懸念される。
  • 用途:コーティング製品、フィラー、パテ、石膏、モデリング粘土、インク、トナーに使用される。
ビス(2-エチルヘキシル) テトラブロモフタレート
  • 個々の異性体およびそれらの組み合わせ
  • 高い難分解性、生物蓄積性(vPvB)が懸念される。
  • 用途:難燃剤あるいはポリ塩化ビニルの可塑剤として、ワイヤとケーブルの絶縁、フィルム、シート、カーペットの裏地、コーティングされた布地、壁装材、接着剤に使用される。
四酸化二ホウ素バリウム
  • CAS RN 13701-59-2
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:塗料やコーティング材に使用される。
2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン-2-イル)モルホリンと2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(ヘプタフルオロプロピル)モルホリン (FC-770) の反応生成物
  • 非常に高い難分解性・生物蓄積性(vPvB)が懸念される。
  • 用途:成形品、作業者 (幅広い用途)、配合、再包装、製造工場で使用される。
2,2′,6,6′-テトラブロモ-4,4′-イソプロピリデンジフェノール (テトラブロモビスフェノール-A; TBBPA)
  • CAS RN 79-94-7
  • 発がん性が懸念される。
  • 用途:難燃剤として、エポキシ被覆回路基板、プリント回路基板、紙、織物などの製品に使用される。
1,1′-[エタン-1,2-ジイルビスオキシ]ビス[2,4,6-トリブロモベンゼン]
  • CAS RN 37853-59-1/li>
  • 非常に高い難分解性・生物蓄積性(vPvB)が懸念される。
  • この物質は REACH規制に登録されていない。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、1物質をREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加した。

  • 物質名:N-ヒドロキシメチルアクリルアミド
  • CAS RN 924-42-5
  • 用途:重合用のモノマー、フルオロアルキルアクリルコートコポリマー、塗料やコーティング剤
  • 有害性
  • 生殖細胞変異原性:区分1B

in vitro試験において、サルモネラ菌を用いたAmes試験では陰性であったが、CHO細胞を用いた染色体異常試験において、代謝活性化の有無に係わらず弱い染色体異常が認められた。

in vivo試験では、マウスを用いた優勢致死試験において、単回投与試験では優勢致死作用は見られなかったが、13週間投与試験では結果は陽性であった。また、マウスに13週間反復投与した小核試験において陽性結果が示されたが、単回投与では影響はなく、ラットを用いた小核試験も陰性であった。さらに、追加のマウスの反復投与による小核試験においても結果は陰性であった。

  • 発がん性:区分1B

マウスを用いた発がん性試験において、肝臓の肝細胞腺腫、肝細胞がん、肺の肺胞・細気管支腺腫、腺がん、ハーダー腺の腺腫、腺がんが見られ、雌では卵巣の良性顆粒細胞腫が認められた。

ラットでは発がん性は認められなかった。

参考資料

5物質がREACH規制の認可対象物質リストに追加された。

テトラエチル鉛
  • CAS RN 78-00-2
  • 生殖毒性が懸念される。(生殖毒性・区分1A)
4,4′-ビス(ジメチルアミノ)-4″-(メチルアミノ)トリチルアルコール(ミヒラーケトンまたはミヒラー塩基を0.1 %以上含有)
  • CAS RN 561-41-1
  • 発がん性が懸念される。(発がん性・区分1B)
1,3,4-チアジアゾリジン-2,5-ジチオン、ホルムアルデヒドおよび4-ヘプチルフェノールの反応生成物(4-ヘプチルフェノール、分枝状および直鎖状 (4-HPbl)を0.1 %以上含有)
  • 環境生物に対する内分泌かく乱作用が懸念される。
2-エチルヘキシル 10-エチル-4,4-ジオクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカノネート(DOTE)
  • CAS RN 15571-58-1
  • 生殖毒性が懸念される。(生殖毒性・区分1B)
2-エチルヘキシル 10-エチル-4,4-ジオクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカノネート及び2-エチルヘキシル 10-エチル-4-[[2-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-2-オキソエチル]チオ]-4-オクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカノネート(DOTEとMOTEの反応生成物)
  • 生殖毒性が懸念される。(生殖毒性・区分1B)

これらの物質は、燃料の添加剤、インクの配合剤、潤滑剤、およびポリマー製造の安定剤として使用されている。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)と加盟国は、148種類のビスフェノール化合物について、ホルモン作用や生殖毒性を評価し、34種類についてはリスク管理措置の必要性を指摘している。

有害性が明らかな物質
生殖毒性や内分泌かく乱作用が認められ、高懸念物質(SVHC)として規制されている。
  • ビスフェノールA (EC 201-245-8)
  • ビスフェノールB (EC 201-025-1)
  • 4,4′-イソブチルエチリデンジフェノール(EC 401-720-1)
有害性を示す十分な証拠がある物質
  • ビスフェノールAF (EC 216-036-7)
  • その塩(8種類、EC 278-305-5、EC 425-060-9、EC 443-330-4、EC 468-740-0、EC 469-080-6、EC 479-100-5、EC 943-265-6、EC 947-368-7)
  • ビスフェノールS (EC 201-250-5)
  • ビスフェノールF (EC 210-658-2)
  • BPA類縁物質 (EC 701-362-9)
有害性が疑われるため追加情報が求められる物質
  • ビスフェノールC (EC 201-240-0)
  • 6,6′-ジtert-ブチル-4,4′-ブチリデンジ-m-クレゾール(EC 201-618-5)
  • TBMD (EC 204-279-1)
  • D8 (EC 405-520-5)
  • DAB (EC 217-121-1)
  • TMBPA (EC 227-033-5)
  • BPA類縁物質(EC 242-895-2、EC 248-607-1)
  • BPS類縁物質(EC 411-570-9)
BPA、BPF、BPSの類縁物質でBPA、BPF、BPSを含有する物質
  • BPA類縁物質 (EC 500-086-4、EC 500-263-6、EC 500-607-5、EC 904-653-0、EC 926-571-4、EC 931-252-8、EC 943-503-9)
  • BPF類縁物質 (EC 908-912-9)
  • BPS類縁物質 (EC 277-962-5、EC 941-992-3)
  • BPS類縁物質(EC 411-570-9)

欧州委員会の消費者安全科学委員会(Scientific Committee on Consumer Safety、SCCS)は、化粧品の防腐剤として添加されるトリクロカルバンとトリクロサンについて、特に内分泌かく乱作用に着目した安全性評価(案)を公表した。

用途
  • トリクロカルバン: 防腐剤として化粧品中に最大0.2 %含まれており、また防腐剤以外の用途として、洗い流すタイプの製品(リンスオフ製品)中に最大1.5%含まれている。
  • トリクロサン: 防腐剤として、歯磨き、ハンドソープ、ボディソープ等に最大0.3%、またマウスウォッシュ中に最大0.2 %含まれている。
有害性
  • トリクロカルバン: in vitro試験において、エストロジェン作用やアンドロジェン作用が認められ、また弱い甲状腺ホルモン受容体との親和性も報告されている。動物実験では、雄の受精率、性行動、雌の着床前後の発達、授乳を介した仔動物への影響が見られ、生殖毒性が認められた。
  • トリクロサン: 内分泌かく乱作用のスクリーニング試験(子宮肥大試験、2世代繁殖性試験、ハーシュバーガー試験等)において、トリクロサンの内分泌かく乱作用を示唆するエストロジェン作用、抗アンドロジェン作用が認められた。
安全性
  • トリクロカルバン: 化粧品の防腐剤として、最大0.2 %まで安全である。また、防腐剤以外の用途では、リンスオフ製品中で最大1.5%まで安全である。
  • トリクロサン: 防腐剤用途として、シャワージェルとハンドソープで最大0.03%、マウスウォッシュで最大0.2 %、歯磨き粉、消臭スティック、フェイスパウダー、傷跡コンシーラーで最大0.3%の濃度まで安全である。一方、ボディローションについては、最大0.3%まで含まれているが、安全性を担保するためには、その濃度が0.03%以下にする必要がある。

参考資料

EU指令2004/37/ECにおける職業ばく露限界(Occupational Exposure Limits、OEL)が改訂された。

 

※職場でがん原性物質又は変異原性物質にさらされるリスクからの労働者の保護に関する欧州議会及び欧州理事会指令

アクリロニトリル
欧州CLP規則の発がん性区分1Bに該当することから、OELが設定された。TWA(8時間の時間加重平均)は1mg/m3 (0.45ppm)、STEL(短期ばく露限界)は4mg/m3 (1.8ppm)に設定された。
ニッケル化合物
欧州CLP規則の発がん性区分1Aに該当し、また気道や皮膚の感作性が懸念される。TWAが設定され、吸入画分として0.01 mg/m3、吸引画分として0.05mg/m3が設定された。
ベンゼン
欧州CLP規則の発がん性区分1Aに該当することから、TWAが0.2ppm (0.66mg/m3)に改定された。これまでの限界値である1ppm (3.25 mg/m3)は2024年4月5日まで適用され、2026年4月5日までは暫定限界値の0.5ppm (1.65mg/m3)が適用され、段階的に改定される。

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミドをREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)への追加に関する意見募集を開始した。

  • N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド
  • CAS RN: 924-42-5
  • 用途:重合用モノマー、フルオロアルキルアクリレート共重合体、塗料やコーチング剤
  • 有害性:変異原性、発がん性が懸念される。(生殖細胞変異原性の区分1B、発がん性の区分1B)
    また、ECHA(欧州化学品庁)のリスク評価委員会(RAC)では、神経系への影響も懸念されている。(STOT反復ばく露の区分1末梢神経系)

N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミドのSVHC収載は、スウェーデンから提案されたもので、本物質がアクリルアミドの代替として使用されることを懸念している。

アクリルアミドはREACH規制においてSVHCおよび制限物質として規制されている。N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミドはアクリルアミドと類似構造を有しており、水溶解性やlog Kow等の物理化学的特性が類似し、有害性についても、生体内におけるエポキシド代謝物への代謝や有害性区分など類似性が認められる。

欧州化学品庁(ECHA)は、8物質をREACH規制の認可リストに追加することを提案している。

エチレンジアミン
  • CAS RN 107-15-3
  • 呼吸器感作性が懸念される。
  • 用途:加工助剤、製油所の除去剤、腐食防止剤、添加剤、臭気の抑制 等
2-(4-tert-ブチルベンジル)プロピオンアルデヒド、その異性体
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:洗濯・洗浄製品の香料、空気ケア製品、香水、化粧品 等
  • CAS RN 7439-92-1
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:電池製造、ケーブル被覆、はんだ付け、車両の部品、機械、家具 等
グルタラール
  • CAS RN 111-30-8
  • 呼吸器感作性が懸念される。
  • 用途:皮革なめし、洗浄剤、ポリマー、X線フィルム現像剤 等
2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン
  • CAS RN 71868-10-5
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:UV硬化性コーティングの光開始剤、インク、接着剤 等
2-ベンジル-2-ジメチルアミノ- 4′-モルホリノブチロフェノン
  • CAS RN 119313-12-1
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 用途:UV硬化性コーティングの光開始剤、インク、接着剤 等
ジイソヘキシルフタラート
  • CAS RN 71850-09-4
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 現在REACH登録なし
ホウ酸のナトリウム塩
  • CAS RN 13840-56-7
  • 生殖毒性が懸念される。
  • 現在REACH登録なし

参考資料

欧州化学品庁(ECHA)は、4物質をREACH規制の高懸念物質リスト(SVHC)に追加した。

6,6′-ジ-tert-ブチル-2,2′-メチレンジ-p-クレゾール
  • CAS RN 119-47-1
  • 生殖毒性が懸念される。げっ歯類を用いた試験において、卵巣重量の低下、子宮重量の低下、卵巣や子宮の萎縮性変化、黄体数の減少等、雌の生殖器系への影響が認められている。
  • ゴム、潤滑剤、接着剤、インク、燃料 等
トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン
  • CAS RN 1067-53-4
  • 生殖毒性が懸念される。OECD TG 422試験において、雌雄のラットの生殖機能、出産への影響として、出産率の低下、精細管の変性、精液減少、前立腺の萎縮等が認められている。
  • 用途:ゴム、プラスチック、シーラント 等
(±)-1,7,7-トリメチル-3-[(4-メチルフェニル)メチレン]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、および異性体や組み合わせ(4-MBC)
  • 内分泌かく乱作用が懸念される。
  • 用途:化粧品 等
S-(トリシクロ(5.2.1.02,6)デカ-3-エン-8(または9)-イルO-(イソプロピル, またはイソブチル,または2-エチルヘキシル)O-(イソプロピル, またはイソブチル, または2-エチルヘキシル)ホスホロジチオエート
  • CAS RN 255881-94-8
  • PBT特性(残留性・難分解性、生物蓄積性、毒性)を有している。
  • 用途:潤滑剤、グリース 等

参考資料

日本

厚生労働省は、食品用香料化合物である3-アセチル-2,5-ジメチルフランについて、遺伝毒性発がん物質である懸念が否定できないことから、食品添加物リスト(ポジティブリスト)から削除すること公表した。

3-アセチル-2,5-ジメチルフランは、ケトン類に該当する物質として、令和元年10月21日付け薬生食基発 1021第1号・薬生食監発 1021第1号「類又は誘導体として指定されている 18項目の香料に関するリストについて」に掲載されている。

一方、新たに実施された3-アセチル-2,5-ジメチルフランに関する各種の毒性試験の結果 注)、ヒトにおける発がん性の懸念は高くないが、遺伝毒性発がん物質である懸念が否定できないと結論され、令和4年12月31日をもって、リストから削除されることになった。

注)

  • 反復投与毒性試験では、6週齢の雄性 F344 gpt deltaラット(大腸菌gpt遺伝子トランスジェニックラット)に3-アセチル-2,5-ジメチルフランを13週間経口投与した結果、肝臓の前がん病変とされるGST-P陽性細胞巣(胎盤型 Glutathione S-transferase陽性細胞巣)の増加が認められた。
  • 遺伝毒性試験では、3-アセチル-2,5-ジメチルフランのサルモネラ菌・大腸菌を用いた復帰突然変異試験において陽性結果が認められ、遺伝子突然変異誘発性を有すると判断された。また、F344 gpt delta ラットを用いて、肝臓におけるgpt遺伝子を指標としたin vivo変異原性を検討した結果、gpt遺伝子の変異頻度が増加し、被験物質の遺伝毒性が示唆された。

参考資料

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